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誕生

出産は鼻からスイカの痛み。


かつて私はこれを嘲笑っていた。


だがしかし。


過去の自分を殴りたいほど痛いものであった。















「奥方様‼

お産まれになりました‼」


「………そ…う」


拝啓お母様。


私を生んでくれてありがとうございます。


これほどお母様に感謝したことはありません。


悪女となった娘より


「立派な、男子にございます‼」


わいわいと喜ぶ女中さんをよそに、私は疲労感たっぷり。


しかも立って出産するなんて信じられない………。


「奥方様‼

抱いて差し上げてください」


………なんであんたは元気なの………………。


そりゃ、産んだの私だもんね………。


ぜいぜいとまだ肩で息をしながら家紋につつまれたおくるみを着た赤ちゃんを見る。


うわぁ、顔真っ赤ねぇ。


「………かして」


「はい‼」


しわくちゃで真っ赤な猿みたいなのに。


赤ちゃんは重くて、暖かかった。


「………………かわいい」


全体的に元康様に似ている気がする。


「…くちもとは、わたしににてる…?」


「奥方様にそっくりですよ‼」


私の家族。


私の記憶関係なしに、私の血の繋がった私の息子。


「………っ………うぅ………っ………‼」


泣きたくなんかないのに。


だけど、本当の意味で今日から私は家族を得たんだ。

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