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妊婦
これは、ほんの少し前のお話しー………。
「身籠りました」
「………は?」
「だから、身籠りました」
ここ数日体調の悪かった私を見かねて、お秋の呼んだ医者の見立てによればいま3ヶ月らしい。
順調に育っており、まして普通の妊婦に比べ悪阻も軽いというなんと素晴らしい息子である。
「男か、女か⁉」
「それは産まれなければ分かりません」
とかいいつつ実際は分かっているのだが。
「そ、それもそうか………」
ほんの少しガッカリしたような元康さまは急に真剣に悩み始める。
「名………名はどうするべきか。
男だったら竹千代………。
女だったら亀?督?いや、初子から初………」
「………元康さま」
「?いかがした?」
この人は。
名前を考えてくれるのは嬉しいがそれよりも。
「…私に言うことがございませんか?」
たいして膨らんでいないお腹を撫でると。
「…よくやった、瀬名‼」
最高の誉め言葉と共に、抱き締められた。