大きな変化
元康さまを、岡崎に返す……?
……本気か、このおっさん。
「わしもよう考えた。
嫡男、氏真にはこの大国を納める器量はないじゃろうて」
「……」
確かに、氏真さまは優しすぎる。
人を疑うことを知らない。
しかし、平成では美点でも、戦国の世では命取りー……。
「わしももう短い。
氏真では元康を抑えられまいて」
「……確かに、そうですが……」
「元康を岡崎に返す話は、石川数正、岡崎の酒井忠次、そして元康にも話してある」
……なら、私に残された道はここに残ること。
義元さまも私に気を使ってくれるのは分かるが、私は平気だ。
ビッチが、これぐらいで泣いたら廃る。
「瀬名、そちは松平の城主の奥方じゃ。
そなたの子が、今川の血をひく子をよしなに頼むぞ」
「……はい?」
松平の城主の奥方?
それって、それって。
「私も、岡崎に行くんですか⁉」
「もちろんじゃ。
何を言う、瀬名は元康の妻じゃろう」
「ですが、まだ結婚も……」
岡崎にいくとなれば、私が殺されるのが早まる。
そんなのはごめんだ。
「結婚は明日、一週間後には元康らと岡崎に出立じゃ」
「は⁉」
今川では義元さまの言うことは絶対。
私に拒否できるはずが無かった。