僕の憂鬱と「僕」の
おやおや、またお会いしましたね。
えっ、覚えてないって?
そりゃ酷いな。
ちゃんと自己紹介したじゃないですか、はじめまして「僕」ですって。
今が何時かって?それは分からないけど。
おはようかな?こんにちはかな?それともこんばんはなのかな?
うん、分からないね。
あははは、あははは、あははは。
うん?、「僕」が何かって?誰なんだって?
それは勿論、秘密だよ。
秘密ってのは知られないようにしてるから秘密なんだよ。知ってしまった人がいなくなるから秘密とも言うかもだけど。
あははは。あははは。あははは。
人って簡単に死んじゃうからね。
死んじゃったら話せないしね。
首を軽く締めるだけでもだし、首の動脈をスパッと切ってもだし、胸のとこに強い衝撃を与えてもだし、頭を軽〜く殴ってもだし。
本当、人って簡単に死んじゃうんだ。
君はどうやって死にたいとかあるの?
えっ、楽に死にたいって?
だったら飛び降りるのが一番かも。
死ぬ瞬間は気を失ってるし。飛び降りる勇気さえあればね。
何だったら、「僕」が背中を押してあげてもいいよ?まぁ、その場合は死ぬ瞬間まで意識を失わせてあげないけどね。
せっかくの人生一度きりの死ぬ瞬間なんだから存分に味あわないとね、勿体無いよね。
死ぬ瞬間はみんな良い顔をするんだよね。これまた、みんなみんな最高傑作って感じなんだよね。
あははは、あはははは。
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僕は死ぬことすらできなかった。
できなかった?いや、まだ許されないと言うべきか?いや言うべきだろう。
両膝と両手を床につけ、四つ這いの姿勢の僕。隣にはキッチンがあって少し斜め上の目線沿いにはコンロがあって。
身体に力の入らない僕の耳には「僕」の笑い声がまだ響いていて、余計に力を入れにくくさせている。
「僕」は、僕を通して人を殺した。きっとこれは事実で現実に起こったことなんだろう。
事実でないことをもうどれだけ願っても現実は残酷で変わることはない。変える方法もない。
僕は医師だ。命を救うのが仕事だ。
最近は技術も高くなってきていて自分だから救えてると思える場面も多くなってきた。
ずっとずっと、本当に長い間、いろいろなものを犠牲にしてようやく今がある。
どこかで医師の家系に生まれたのだからと使命のような気持ちも強かったし、