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装着と執着

「…お、おい。イレイザーだ。このま…まじゃ全員消される。死にた…たく、ないなら、い、今から俺の言うことを良く聞け。うっ、ゴホッ」


おっちゃんの声に我に返る。


「おっちゃん!ごめん、今助ける!」


「いや、俺の事はいい。もう助からない。うぐっ。そ、それより、いいか?よ、よく聞け」


「そんな…ちょっと待っててよ。助けるから!」


「いいか。大渕、くん、カウンターの奥…ち、厨房の中に、き、黄色のリュックサ…サックがあるはずだ。まずはそれをここに持ってこい。すぐにだ!」


「で、でも…」


「いいから行け!」


「は、はいっ!」

なんだかわからないが、カレー屋のおっちゃんとは思えない迫力に圧され、オレは震える足で何とか立ち上がり、元厨房だった辺りに向かった。

グチャグチャだ。

皿は割れ、冷蔵庫は倒れて、水も吹き出している。

スパイスを置く棚だったのだろうか?銀色のよく見る網の棚の一番上に、埃にまみれた黄色い袋がある。


「これか?」

引っ張り降ろす。


「お、重っ」

見た目は小さい袋だが、腕を通すらしい輪っかが2つと、お腹で縛るのかな?ベルトのようなものが付いた、リュックみたいな袋。

何が入ってるのか?見た目以上に重たい。ていうか、入れるも何も、袋に切れ目も何もない。


オレは痛くて震える体でそれを持っておっちゃんの前にへたり込んだ。


「こ、これですか?」

おっちゃんはニヤリとした気がした。


「そう。それだ。それを背負え」


「……」

わけがわからないが、それはもう、全て。何なんだと思いながらも、これしかないんだという不思議な気持ちでオレは言われるがまま、腕を通し、ベルトを留めた。

外では近くなった乾いた音と、女の子のすすり泣く声が聞こえる。


「イレイザーの量産スーツより性能はいい。あ、あとは…キミの…」

おっちゃんの手がオレの太腿に刺さっていたガラスの破片を掴み、一気に引き抜く!


「痛っ!」


「大丈夫。血管はイッてない。さぁ、生き残りと自分自身のために。念じろ。死にたくない。強くなりたいと!ぐふっ…」


なんだろう。涙が出てきた。この初対面のおっちゃんは、この初対面の若造を身体を張って助けて、そして今、死にそうになっている。

あのカップルも、何気ないデートの途中だったはず。不味いカレーも良い話題になって、また笑える時間が来るはずだった。

外の女の子は、もう一生お母さんとお父さんに会えない。


これは誰がやった?

あの黒い奴か?

爆発で死ななかった人にトドメをしてるのか?

オレも殺されるのか?

何故?


泣きながらオレは震えた。怒りと、悲しみと。




ぶっ殺してやる!




その瞬間、背中のリュックから軽い振動を感じた。

小さな、ブーンという機械音。

背中から広がる不思議な感覚。

身体を何かが覆っていく。



顔…頭も何かが被さってくる。



痛みが引いていく。震えも止まる。

身体全体を何かが覆い尽くした時、薄暗かった景色は鮮明になり、生きている人の存在を正確に感じていた。


全ての感覚が10倍くらいになった感じ。


これは??

な、なんだってんだ!?





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