表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/65

第51話 そこはちょっと我慢してもらわんと。

「今いるところは……そうですね、大体ここですわ、和人さま」


 ノウァ・バルカと共に、なんか微妙に抽象的な地図を眺めている。“当会場へのアクセス”と銘打たれた、パソコンが苦手な方がお作りになられたアクセスマップみたいなものだ。非常に不安を覚える、なんか割りと適当な地図だ。

 正直に言って死霊術師(ネクロマンサー)でも連れてきて伊能忠敬召還したいレベルの出来であるが、ドヤ顔で持って来たノウァちゃんには申し訳ないのでそこは流石に内緒にしておこう。


 それに、少々古いモノではあるが仮にも領主の家にあった物なのだ、位置関係は正確であろう。


 けども、滲んでいたりしていて、所々地名が読めない部分もある。

 所々読めないって事は大体は読めるってことなのだが、改めて地図を見ると、やはり見慣れた言語でそれは書かれていた。

 総合案内所の掲示物と同じだ。


 ま、いっか。お陰で語学勉強の苦労はしないで済むのだから。

 それに、指輪の声の主も“いつか分かる”と言ってたし、考えなくてもいいことは考えないことにしようと思う。


 あぁあ、Gougloマップがあればメートル単位で距離が分かるのに。ルートも。

 携帯端末にはその地図、一応は入っているんだけども、天下のGougloさんでも異世界には派遣出来なかったみたいなのである。当然の事ながら地図は表示されなかった。

 本気出したらそれさえも出来そうなところが、あの勢い溢れる企業の怖いところだが。


『じゃな、ゴウグロマップ超便利じゃった』

『あのねぇ、魔王さん、身体返してくれたのは評価してやるけども、思考を読むのはやめなさいって言ったよな?』

『いいじゃろう! 別にぃ! 楽しいんだしぃ!』

「プライバシィ!」

「ど、どど、どうしました? 和人さま」

「すまん、なんでもない」


 はぁ。

 時折、彼はこうして、触れている者の思考を読むのだ。

『息子の息子を毎日握らされるのじゃぞ、それくらいの遊びくらい許されて然るべきじゃろう……』

『お前と違ってトイレに行きたくなるものなの。生理現象ってやつ! 次言ったら火山には連れて行かない、今ここで土に埋めるからなッ』

『フフフ、生理現象ならフフッ、仕方がないがのう……フフお主たまに、ムス――』


 ……土に、埋めた。深く、深く、二度と人の手に触れぬよう。

「和人さま、なんか土の中から声が」

「気にするな、どこにでもいる土の精霊だ」


 この抽象的なクソみたいな地図が正しいのならば、現在地から隣国首都までの距離はそう遠くはない。辿ってきた道を10回往復する程度の距離であり、早馬ならば3週間程度だろうか。


 勿論、成し遂げようとする気概さえあれば、徒歩でも行けない距離ではない。


 そう、徒歩でも。

 それが徒歩だけに途方も無い距離だったとしよう。それでも、いつかは辿り着く。

 しかし、俺と妹を隔てているのはそんな物理的距離じゃない、時間的な距離なのだ。仮に妹に辿り着いたとしても、既に違う時間を生きているのだ。


 せめて、俺の事を覚えててくれればいんだけど。


「俺の事、覚えててくれてるかな……」

「妹君でしたわね……。大丈夫です、きっと覚えててくださいます」

「ありがとう、ノウァ」

「はい」


「んー、怖い、出して!!」

 指輪の彼は、脳内に直接語りかける場合は触れた者のみが対象となるが、普通に空気や接する物体を振動させて音として周囲の人間に意志を伝達する事も可能なのだ。

 もっと、深く埋めるべきであった。


 まぁ、なんか悲痛な叫びであったので、一応連れて行ってやる事にした。

「オニ! 悪魔! バーカバーカ、ヴゥゥアァカじゃ! お主酷い、怖かった……すごく怖かったんじゃぞ!」


「なんかお前指につけてるのやだぁ……」

「変な指輪ですわよね」

「だよなぁ。そのハルバードでカチ割ってくれない?」


「すまんぬすまんぬ、ワシ反省した! 薬草早く見付かるといいのう」

 “死霊魔術で伊能忠敬呼び出せないの?”って聞いたら、“流石にそれは無理じゃ”って冷静に言われた。違う世界の霊は、ここには呼び寄せる事が出来ないらしい。


 早く見つけないとな。メイドさんの為にも、その弟さんの為にも。

 俺たちの戦いはこれからだぜ!!



 と、密かに心の中で意気込み、その場を後にした。



 しばらく国境方向へ向かうと、比較的樹高のある乾燥した草原へと辿り着く。その樹高は……膝ほどであろうか。

 辺りを改めて見回すと、探してたと思われる草を発見した。


 肩掛けの鞄には、パンやら何やら沢山入ってはいるんだけど、それをノウァちゃんの鞄へと全て詰め込んだ。多分、パンはもうボロボロだと思う。

 その小さな黄色い花の咲く草を入るだけ詰め込みたかったので、そこはノウァちゃんにも我慢はしてもらわないとね。


もしかしたら、完結前に改稿版を出すかもしれないです。

ブクマしていただいた方にもっと楽しい小説を読んで頂きたいので、

というのも当然あるんですが、自分でももっと楽しんで書きたいので!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
■「へぇ……ちょっと続き気になるかも?」って方はリンクをクリック! ポチっとな!■
》》スクロール文字小説家になろう 勝手にランキング《《
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ