表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/65

第50話 確かめよう、全てを。

 砂煙が徐々に収まりつつある、あの爆心地。その周辺はまさに惨状というべき様相を呈しており、すり鉢状のクレーターはその魔法の威力を実にまざまざと表している。

 一部はガラス質となっており、その時発生した熱量たるや俺の想像の及ばぬところを行っている。


 あぁ、凄い。実に惚れ惚れする。


 ヤツの話を信じたワケではない。だが、こうも見せ付けられてしまっては、少しも信じぬ方が難しいのではなかろうか。

 その魔王の力。恐らくこの指輪に内包されたエネルギーは、質量では測りえない程なのだ。これは握って隠せるほどに小さく、恐らく重量は50グラムに満たない。しかし、これは実に手に余る。


 だがしかし、自らのモノとしてみたいと思うのだ。自分を大きく見せたいという気持ち、それは男の(さが)だといえる。





 しかし、本当に酷いなコレ。中心部はまだちょっと赤い。今少しだけ身を乗り出して覗いてもらったのだけど、放射熱だけで火傷をしてしまいそうだ。

 もしこれ現代世界での出来事だったら、俺、世紀の大犯罪者で懲役どころか死刑だわ。


 難なく行使され、しかも、地を深く穿ったその魔法。それはまるで、大きな爆弾のように……。

 自称魔王の話によると、それは火炎魔法と電撃魔法を応用した、いわゆる複合魔法と呼ばれているものだった。

 この複合魔法、単純なものであれば俺にも出来る。


 まぁ、俺の場合はそう呼ぶのもおこがましいほどの物なのだけど。

 まずは密閉容器に水を発生させ、それを超高温の熱に晒す。それだけ。

 “魔法以外の物を事前に用意しなければならない時点で複合魔法じゃねぇだろ”と言うクラスメイトもいたけど、一応は複数の魔法を同時に行使するので、まぁ、複合魔法だと言っても問題は無いだろう。


 原理としては、こう……だったかな。密閉容器中の水は熱せられ、水の一部は蒸発する。あとは逃げ場を失った水蒸気に容器内は加圧される。そして、容器が破壊されるまでの僅かな時間も魔法による加熱は続けられ、水の温度は100℃を優に超えることになるだろう。容器が破壊されて水の周囲が1気圧になると、100℃を超える温度の水は瞬間的に蒸発するのだ。たしか、そんな感じだったような……。

 まぁ、威力としては強いものじゃないし、その高温にする魔法で直接攻撃した方が効率的なのだけど。



 とまぁ、それは置いといて……。

 炎と電気だけで、こんな爆発起こせるものなのだろうか。原理が全く想像出来ないのだけど、なんか危なそうなニオイがするなぁ……。

 こんな危険な魔法は使って良いのか疑問なんだけど、自称とはいえ今俺の身体を操っているのは魔王だったのだ。少しネジが外れていても納得は出来る。


『頭おかしいだろ、魔王さんよぉ』

『魔法少女みたいな口上を好むお主に言われとうないわ……。それに、今回は元々殺すつもりなどない、わざと影響が無いように大きく的を外したのだ。でさ、今回のこれで襲撃者は雇い主のところに戻って事の顛末を報告するじゃろうな』

『だろうね』

『うむ。恐らくはお主の事、高名な魔術師だと勘違いするハズじゃ。“ただの怪しい素性も知れぬDKじゃねぇ!”とな』

『DKって何??』

『DanshiKoukousei。お主が高名な魔術師となれば、あっちとしては怖いから手出し出来んじゃろ? たぶんじゃが、もう大丈夫』

『ふーん。アイツと話してたけどさ、知り合いだった……よね? お前の生まれ変わりだって思われてる可能性って無いの?』

「あっ」

 彼は思わず、“しまった”と口を押さえた。


『まぁ、アレじゃ、スマン』

『はぁぁ……』

『しかたないのぅ、これ、もう現魔王派を滅ぼすしかないのう……すまんのう……』

 当面は守ってくれると約束はしてくれたものの、そもそも襲われる理由だって分からないのだ。恐怖感はそう簡単には拭えやしない。

 というより、現魔王派とか言われてもなぁ。

『なんで俺巻き込まれてるの。これって、魔王養成ごっこだろ? 戦いに巻き込まれる理由がわからないよ』

『ゴッコではない。ワシが言った事も全て事実じゃ』


 彼は一息入れる。

『……“異世界にも妻がおる”と言ったじゃろ、それがお前の母親じゃ。つまり、お主の妹はワシの娘というわけじゃ。んで、妹、探しておるのじゃろ?』

『あぁ、探してるよ』

『ある日、弱々しい特殊な魔力の波動を感じ取った。もしや娘か、そう思ってワシも探した、探し回ったさ。この国の王にも協力を依頼したぞ。じゃが、いくら探しても見付からなかった。』

『まさか……』

『そう、そのまさかじゃ。この国にはいない。ワシの娘、いや、お主の妹は、ワシが主君をしておった隣の国……カタルタゴにおる』


 発せられるその波動は余りにも弱々しく、正確な場所を特定することは出来なかったらしい。

 その時の彼の声色も、とても弱々しかった。

『その波動は今もなお発せられておる。しかしな……それを感じ取った日、というのは、非常に言い辛いのじゃが、百年ほど前の話なのじゃ。その波動の持ち主が娘じゃったら、既に人とは呼べない存在になっているのじゃろう』


 百年も前……。

 そっか。俺と成神に1ヶ月の差があったように、妹とも“差”があってもおかしくはないのだ。

 こんな悲しい事、あってたまるものか。確かめよう、全てを。

まことに勝手ながら、新作も書いてます。

もしお暇でしたら、どうぞ!

http://ncode.syosetu.com/n0749di/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
■「へぇ……ちょっと続き気になるかも?」って方はリンクをクリック! ポチっとな!■
》》スクロール文字小説家になろう 勝手にランキング《《
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ