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第49話 ぽわぽわ温かいお日様! 皆をあたためて! ぱるうぁえ・そる!

 ケツ丸出しエピソード。それは俺を堅く縛り上げる、重く冷たい鎖。

 なんて、大層なものではないのだけど、アレが世に……彼女らに知れ渡ったらそれこそ事であり、それに気を揉む、というのはたしかに俺を縛るビニール紐程度の物ではあるのかもしれない。

 まぁ、縄跳びの紐ので縛られてはみたいなぁ、なんてちょっと思ったりはしたけど。


 それはそうと、指輪が言った“パルウァエ・ソル”ってなんだろ。ソルって言うくらいだから、太陽の陽射しみたいな何かをビャァーーってやるなんか凄い攻撃なのだろうか。

『まぁ、もうオシリの件は怒ってないから、その……なんとかソルってのやってみてよ。ほらほら、今すぐにさぁ』

『お主がっついておるのぉ。そんなのではモテぬぞぉ。まぁ、ワシはがっつき過ぎて異世界にも妻がおったがの。グワッハハハハ』

『モテるモテないの話はいいから……次それ行ったら火山な』

『ハイ……。速やかにソルります』

『何だよソルりますって』


 指輪の彼は俺の腕をゆっくりと上げ、前へと突き出した。襲撃者が逃走した方向だ。

「ワシの情熱は地上に降りた太陽、その身をもって全てを焼き尽くせ! パルウァエ・ソル!」

『恥ずかしいことを俺の体で言うのはヤメロォォ!』


 ビャァー! とかピカー! ってなると思っていたのだが、不発だったのだろうか、何も起きる様子はなかった。

『なんだよもう、俺が恥ずかしい事を言っただけだっ――』

 眼前を覆う、真白なベール。

 “あぁ、これは、またどこか新しい所に連れて行かれるのだろう”、そう思ったさ。身体は乗っ取られて自由が利かないけども、心の目を閉じてそれを覚悟した。


 しばらくして、指輪が操る俺の身体は目を開けた。


『あれぇ……』

 なんて事は無い、恐れる必要などなかったのだ。そこに存在したのは、先ほどと変わらぬ風景である。とても温かい、痛いほどに眩しい2つの朝陽(ちょうよう)であっ……えっ、2つ!?

 太陽は一つ、これ、常識。

 まれ“太陽”を複数抱える恒星系も存在はするが、この世界の太陽は昨日の夕方までは1つだった事は間違いはない。それが、今日の朝に2つに増える事など有り得るのだろうか? いや、ない。有り得ない。

 そして間を置かず、臓腑を押し上げるかのような衝撃波が襲ってきた。


 太陽を、この地上に作ったとでも言うのだろうか。

 だとすると……核融合?


『ちょ、えぇ、なにこれヤバくない? ちょっと待って、自称魔王さん。なんか太陽が沢山あるんだけど、一体どうしたのコレ? こ、これ、なんかヤバイ奴じゃ?』



『ん? これはアレじゃ、火炎魔法と電撃魔法の応用。単に磁場で炎よりも熱い炎を閉じ込めて、電撃魔法で更にその炎を“燃やす”、それだけじゃ。太陽みたいで凄いじゃろ? それがワシの情熱、パルウァエ・ソルじゃ』

『へぇ、磁力って概念はこの世界にもあるのねぇ。まぁそれはよく分からないですけど、あの口上だけどさ、恥ずかし過ぎると思うよ。止めた方がいい』

『“ワシの”から“焼き尽くせ”までは省略も改変もOKじゃ。気分じゃよ気分。まだまだお主には扱えんじゃろうが、もし使う時が来たらその時はお主が勝手に決めて詠唱すればよい。“ぽわぽわ温かいお日様! 皆をあたためて! ぱるうぁえ・そる!”でも良いぞ。まぁ、これは流石に恥ずかしいと思うがのぅ。お勧めはせん』

『まだそっちの方がマシだなぁ……』

『自分で言ってて済まぬが、お主ちょっと変じゃの』

『お前の息子だからね、センスの無さも似てるのかもね』

 俺はそれを皮肉を込めて言っただけなのだけど、何故か真に受けたらしく、その指輪の声の主がうな垂れたような気がした。もちろん、姿は見えないのだけれども。


 でも、頭のおかしい指輪の声の主に頭おかしい、なんて、それだけは正直言われたくはなかった。ただ、まぁ確かに、どっちも頭はおかしいのかもなぁ、とは思った。

『ごめん、ちょっと言い過ぎた。でもさ、日曜の朝にやってる魔法少女モノのアニメみたいでいいかなぁって思ったのよ』


 指輪との対話をしている間に、先ほどまで存在していた偽物の太陽は消える。砂煙は立ったまま、しばらくは消えそうに無かった。

 

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