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第48話 もうお嫁にいけない、責任……とってくれるよね?

 “指輪の声の主は先代魔王様”と、自称元将軍のハミルカル・バルカ氏は言った。

 そしてその声は俺に対し、ややふざけた様子で“我が息子(マイサン)”と、ふざけた事を口にした。もっとも、指輪なので口は無いが、少々憎たらしい顔は思い浮かんだ。完全なる想像、被害妄想である。


 それはいいのだ、例え真実ではなかったとしても、いくらでも俺の父親だと言い張ることは出来るのだから。ただ俺が目を丸くしたのは、その後に発せられたある言葉だった。

 見えない口から放たれたのは、“お主の世界に行った事がある”。


 先ほど彼が楽しそう口にしたカップラーメン、ファイクエやドラファンの話は、“行った事がある”という戯言の真実味をはっきりとした物へと変えるに足るものだと、少なくとも俺は感じた。なぜかって、上手くは説明出来ないのだけど、リアリティがあったのだ、話に。


 上手くは説明出来ないけれど、妙に、妙な、リアリティ。

 それが引き起こされる要因としては、脳内の盗み見行なわれた事が考えられる。

 俺の記憶を閲覧出来たなら、俺に“えぇ! なんでそんなこと知ってるの!? よく知ってるなぁ”と思わせるなんて簡単な話なのである。それにその手の術は魂を一時的に対象と繋ぐ為、術者はまるで自分が経験した事のように感じる。それを話すのだから、相手もリアリティを感じるだろう。しかし、実際には体験してない事であるが故、話を聞いた者に違和感を与える事にもなるのであろう。

 至極簡単なとは言えないが、その類の魔法は大学に相当する学年の専門科で習う事が出来る程度モノだ。なので、この付喪神のごとき指輪の主……というかタダの残留思念なのだけど、こいつにも可能といえば可能。

 俺は詳しい方法は知らないが、かなり深い場所にある記憶も掘り起こせるらしい。ってことは、カップラーメンを食した記憶を思い出させることなど造作もないはずである。特に、ある程度の魔力を持っている者ならば、なおの事。

 もっとも、正しい手順を踏まずに高魔力で強引にそれをされたなら、術を受けた対象がそれに気が付かないはずはない。それに、最悪の場合一時的な精神的混乱も起こる事が確認されているのだ、術を受けていたら、こうして普通に立ってはいられないだろう。まぁ、今俺の体を動かしているのは、俺ではないのだけど。


 それは、俺が就寝中に術を受けたとしても、変わらない。“寝てるから気が付かなかったよ、あはは”と軽く流せるモノではない。


まぁ、俺たちの世界とこの世界の魔術体系は違うだろうし、もっとスマートに記憶を引き出す方法もあるのかもしれないが、今はなんとも言えない。



 ともかくあの言葉が本当なら、まぁ、バカ魔王が遊びに来た事はとりあえず置いておくとして……俺たちは帰還する事が出来るかもしれない。あの、憂鬱なこともあるけども、退屈で優しい世界に。


 本当に、良かった。帰還への第一歩だ。

 今はまだ、身体から魂が隔離されている。その状況から解き放たれたら、自称元魔王を脅して詳しい話を聞き出そう。

 正確には、自称魔王の固有魔素(オド)がリング状に凝集された指輪であるが。それを火山にでも放り込むぞと脅せば、一発である。頑として話そうとはしなかったら、実際にどこかの火口まで赴けばよろしい。そして、火口に向けて美しいピッチングフォームで投げるフリをする……。

 一発だろう。


 明日から、火山に指輪を放り込む為の物語が始まるのだ。多分、エルフとかホビットとか出てくる、途中で。これ以上は言えないが、きっと面白い旅になるだろう。



 それはそうと、ともかくあいつが詳しい話をしてくれたら、これはもう、帰還への第一歩どころかほぼゴールとも言える。

 “ほぼ”……。

 そう、ほぼ、なのである。大切なクラスメイトたちは数人見つけたが、妹はいない。


 帰還が出来てしまったら、なおの事俺が魔王だという事に真実味を帯びてしまうのだけど。


 しかし、真偽はまぁ別として、一体何故俺なのだろうか。

 魔王になれるよ詐欺、ってモンがあるとしてもだ、今現在月謝等を払わせられる気配すらない。むしろ色々支援を受けているのだ。この世界では白米だって頂いたし、一緒に食事だってした。領主の遊びにつき合わされてるだけなのかなぁ。まぁ、それならそれでいいか、実害も無いわけだし。



 俺、本当に魔王になっちゃったのかな……?

 魔王になっちゃったなら、これから先、巨乳美女のハーレムでキャッキャウフフする機会ってあるのでしょうか、神さま……。


『キャッキャウフフ出来るんだよな!?』

『はぁ!? 出し抜けになんじゃ……。そら、お主がその気になれば、その権力でハーレムなんて容易いが?』

『嘘でしょ?」

『嘘言ってどうする、お主に嘘を吐く理由など無いわ。おバカ糞ヘタレ息子が』

『ええ……。なんで特に理由も無く言葉の暴力振るわれてるの……。第一にさ、アンタが父親かどうかも分からないのに、バカ息子呼ばわりされても困惑を隠しきれないよ俺。なんか証拠でもあるのぉ!?』

『ホクロ。オシリにホクロ』

『知らねぇよ……』

 ズボンと下着を脱ぐ、俺。中身は自称魔王。

『ちょぉぉおおお、何するの糞魔王!』

『ほれ、ここ』

『うーん、これはちょっと見えないですねぇ。姿見が欲しいですねぇ……じゃなくて……さぁ!! やめてよぉぉおお……』

 俺でさえ知らなかった事を、指輪の声の主は知っていた。これで、俺の思考を呼んで嘘を吐いてるという線は、限りなく薄くなった。ハミルカル邸にで入浴中の俺を凝視してた、というなら話は別だが。

 しかしまぁなんていうか、ノウァちゃんが見守る中、俺は下半身を露出してデリケートな部分のホクロを確認したのだ。しかも、傍から見れば独りでケツを見ようと試みていた。これはもう事件と言う他ない。


「か、和人さま……」

『ほらぁああああ見られてる! 見られてる!! あ、でも、ちょっと癖になるかも……じゃなくて、女子グループで変な噂とか流れたらどうするんだよぉおお!』

「ノウァと申したな、ハミルカルの娘……じゃな。ここまでワシを運んでくれてご苦労だった。それで、ちょっと見て欲しいのだが、ほれ、どうじゃ、ホクロあるじゃろ?」

「は、はい、確かにあります……和人さま」

 顔を赤くして、俯くノウァ。

 やばいなぁ、これ、5人のパジャマパーリィの際のかっこうのネタだよ。絶対やつらに“ケツボクロ”って呼ばれる。

 もう、俺のメンタルはHP0であった。ファイナルクエストの戦闘画面なら、今、ステータス欄は赤く染まっている。


『おまえなぁ、おまえなぁ……。俺が主導権取り戻したら、火山にこの指輪をぶっ込むのでよろしくです!』

『あ、すまなかった、ほんとう。やり過ぎたみたいだの。すまぬすまぬ』

 素直に謝罪をする、自称魔王。

 これなら帰還のための情報、すんなり教えてくれそうだな。



『俺がオシリを少女に見せたという事実! それと、メンタルに負った深い傷は! いくら謝られても消えねぇんだよぉ!』

『ホント、すみませんでした。しかし、ワシは仮にも元魔王じゃぞ、それがこうして土下座して謝ってるんじゃ。許してはくれぬのか……?』

『あのね、今土下座してるの俺の身体ですけどねぇ……。 ノウァちゃんからみたら、下半身丸出しで土下座してるんですけどね、それも独りで。いやぁあああもうお嫁にいけないなぁ……傷付いたなぁぁ』

『分かった、分かった! 後でそなたに力を全て授けるから。それと特別じゃ、最大火力のパルウァエ・ソル見せてあげるから!! 許して、父さんを許して!』

『父親だと認めたわけじゃねぇ! なんだこのやり取り!! 義父と息子を題材にした青春ドラマかな!?』


 俺は全てを曝け出した。もう何も怖くない。だって、これよりも屈辱的な事なんて、そうそうありはしないのだから。

 あぁ、この旅が終わったら、きっとノウァちゃんは旅の思い出としてあの5人に語るんだろうな、オシリ開示事件の事を……。そして、その日のパジャマパーリィィでは、その話題で持ちきりになるんだ。


 そして校内新聞記者である塩見リコは、目を輝かせてメモを取る。記事にする気だ。

 そうだ、オシリ丸出し事件のほとぼりが冷めるまでは、帰還の方法は詳しく聞かないことにしよう。校内新聞にケツエピソードなんてものが載せられたら、もうお嫁にも学校にも行けない……。

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