第2話 和人、ぶっ飛んじゃいました。
他人とのコミュニケーションが大好きなワケではないが、独り取り残されるのは耐え難い。
各教室にクローンの如く存在するアナログ時計の全てが、同じ時間を指して動きを止めていた。これはただの故障ではなさそうだ。
学園内で確認してない場所は地下だ。その確認してないエリアというのは一部の教職員のみが入る事が許されており、扉に近付く事さえ禁止されてる。過去には、近付いただけで3日間の停学になった生徒もいた。
しかし、今は状況は違う。誰もいない、明らかな異常事態で何を咎められる事も無い。いや、分からないが。ただ、こうなってしまったら、やるべき事は一つだろう。個人的に中を知りたいという欲求もあるが、これは黙っておけばいいだけの話。
異常事態から来る気分の高揚感が、俺自身さえも異常にさせた。
不謹慎にも足取りは軽い。軽快に地下へと降りた俺は、堅く閉ざされた重厚な扉の前に立った。一目見て、うーん、無理ですねこれ、と思わされる威圧感。核攻撃でさえ耐えきってしまいそうな程に、兎に角頑丈そうだ。
爆発を起こしたら巻き込まれる。
風では破壊は出来そうにない。
電撃のジュール熱より溶断する事も可能だが、他人が巻き込まれる可能性がある。それはどの魔法に対しても言える事ではあるが、電撃の場合特に可能性が高い。
扉へと、一歩を踏み出した。すると毛が逆立ち、皮膚がチリチリと焼けるような感覚がした。
――怖い。扉の向こうには何か強大な力が眠ってる。幼馴染やみんなが消えたのも、これのせい……なのか?
消えたのだとしたら、失うものは既に無い…のかもしれない。それは分からない。
この扉を壊そう。
勘違いただ単に扉を破壊しただけであっても、最悪でも退学で済む。でも今この扉の向こうに行かなければ何もかも失ってしまいそうな、そんな恐怖に襲われた。
「やるしかない、よなぁ!! お前ならできる!!」
そう自分に言い聞かせ、不安を胸から払い落とした。
棒で叩いては破壊できそうに無い。ならば、扉を焼き切って中に入るしかない。
炎属性魔法の詠唱を始める為に、意識を強く掌に集中する。するとその瞬間、扉の表面が輝き始めた。魔法により赤熱されているわけではない、扉が、扉そのものが光り輝いているようだ。
「えぇ、なにこれー!」
俺の集中とは無関係に扉は光を強め、辺りを飲み込んでいった。
……
どれほどの時間、気を失っていたのだろうか。
「あぁあ、やっちまった」
ゆっくりと目を開ける。するとそこには、どこの物かの天井があった。