いしころ
ぼくはいしころ。
こーろころ。
昔はね。
大昔はね。
もっと大きかった、気がする。
昔はね、大昔はね。
もっと、沢山だった気がする。
この間、踏まれたんだ。
少し、小さくなったんだ。
この間、潰されたんだ。
少し、小さくなったんだ。
この間、打ち合わせたんだ。
少し、小さくなったんだ。
この間、落っこちだんだ。
少し、小さくなったんだ。
大きかったころは、もっと尖っていた?
大きかったころは、もっと歪だった?
大きかったころは、もっと「ヒナタ」と「ヒカゲ」があった?
大きかったころは、もっと「トモダチ」が多かった?
カドガトレテ、マアルクナッタ。
デコボコガケズレテ、タイラニナッタ。
カゲカナクナッテ、ヒガアタルヨウニナッタ。
トッカカリガナクテ、ミンナハナレテイッタ。
そうして、僕は、いしころになった。
いしじゃなくなった。
ころがついた。
誰かのために、なんて、大義名分。
縁の下の力持ち、なんて、綺麗事。
隣を見れば、ころがいる。
たくさん、たくさん、並んでる。
そうやって、大きな荷物を運んでいる。
いしは、しゃべらない。
ただ、黙々と、音を出す。
ごーろごーろ。
いしころは、いしから、ころになったって、知っているのかな。
つるんとしているんだね。
平気な顔してるね。
濡れても、すぐに乾くんだろうな。