久々の再会
今の世に生を受けてから、外見的にはひたすら寝てばかりのとりたてて何もしていない人生を送っておりましたが、久しぶりに目を覚ました極短時間で色々衝撃を受けました。
はぁ、疲れた。
色々とこれからのことを考えていかなくてはいけないですが、とりあえず私が産まれていつの間にやら3年経ったようです。
無事3歳おめでとう、私。ありがとう、私。うわぁ~い!!
………………………虚しい。
ところで、何故いまだに白い空間の中にいるのでしょう?
先ほど確か目を覚ましました………よね?
目を覚ました時間があまりに短かったので、イマイチ確信できないのですが。
もしかしたら、またあの知識の泉に放り込まれるのではないかと、ドキドキしていましたが、そんな気配もなくここに佇んでおります。
はっ!もしや、属性Sの方(別名、時の番人―――私にとっては別名が時の番人で正解です)に何か!!
トラブルですか?
日頃のSが祟りましたか?
日頃の行いって大切ですよね。
うんうん。
「何してるの?」
「うん?」
………………………でた。
「久しぶりだね」
にっこり笑う、淡く光を放つ少年―――というか、青年??
あれ?何かでっかくなってないですか?
「あぁ。以前会った時は君の視界サイズに合わせて小さかったか。今の君は無意識に17歳の時の体を作り上げてるから、君に合わせてみたんだよ。本当は、この空間にあるのは魂だけだから、本来外見なんて関係ないのだけれど、人の姿をしていた方が君は話しやすいだろ?」
意外と気遣いさんでした。
この空間で過ごしている間、視界に入ってくる手や足の感じは幼い子供のものではないのが気になってはいたのですが、今の私は17歳の姿なのですね。
転生魔法をかけられた時、ロザリアはちょうど17歳でした。
たぶん、その時の感覚を体が覚えていたのでしょう。
「あと、前世の感覚もね」
………?
「君の前世も17歳で亡くなっているからね」
………はい???
ロザリアから今の私が産まれるまで4年しか経ってないはずですよね??
「この世界の時間の流れでいえば、ね。だけど、この世界の時間の速さが別空間の世界の時間の速さと必ずしも同じとは限らない」
そういうと、彼の両の手にそれぞれ小さな光の玉が現れました。
それぞれの光の玉は宙に浮かび、片方はゆっくりと、もう片方はすごい速さで回転を始めました。
「このゆっくり回転しているのが、この世界の時間の速さ。もう片方が前世で君がいた世界の時間の速さ。君は、この2つの世界を行き来したんだよ。世界の理も何もかも無視してね」
ゆっくりと回転する光の玉から一筋の光が現れ、もう片方の光の玉へと向かっていきました。
すると、それは回転のスピードに振り切られるようにはじかれ、散り散りになってしまいました。
そして、次は速く回転する光の玉から光の筋が現れ、もう片方の光の玉へ。
すると、今度は光の筋が光の玉に突き刺さって砕け、光の玉はいびつな球形へと姿を変えました。
「いくら強制的に魔法で魂が引っ張りこまれたといっても、正当な手順を踏まずに時空を渡ろうとすれば、こうなるのが普通だよ。―――でも、君は違った」
こちらに向けるその視線。
なんですか?とても居心地が悪いです。
でも、視線をそらしたら負けな気がします。
むっ、ま、負けませんよ。
意気込んで睨み付けると、彼は微かに笑いかけるように目を細め、降参とばかりに両手を挙げました。
「何なんだろうね、君は。力があるわけでもないのに2回も時空を渡り、その上魂が消滅することも気がふれることもなく存在し続けている。大したものだ」
ん?褒められた?
どちらかというと、バカにされたか呆れられた気がします。
「ところで、最初の質問に戻るけど『何してるの?』」
そう言われましても、唐突に変わった話題についていけず思わず首をひねると親切に補足してくれました。
「確か、属性Sの方がどうとかって考えてたよね。あの話からすると、属性Sの方って僕のことだよね?ああ、でもその質問の前に………、『えす』って何かな?」
はいいいいいい!?
私しかいないと思って、完っ全に気を抜いていました。
えぇぇぇ、えす、エス、えす、エース―――これだ!
いや、『これだ!』じゃない。
ええっと、属性エスじゃなくて、エースの聞き間違いですよ。皆の期待を受ける側に属する人だなってことですよ。
こんなの向こうの世界でも正式な言葉ではないですけど、そういうことです!
「―――――――――ふぅん」
さっきとは違う風に細められた目。
あぁ、黒いオーラが漂って見える。
疑ってるぞという視線を受けますが、ここで何を言われても私の答えは変わりませんよ!
「そう」
ええ、そうです!そうですとも!
―――――――――ふぅ。セーフ。乗り切った。
こっそり胸を撫で下ろした直後、件のS氏は更に口を開いた。
「………じゃあ、日頃のSが祟ったっていうのは?」
はい、アウトー!
魚の様に口をパクパクさせる私に、黒い笑顔で迫ってくるS氏。
お、女に秘密はつきものです!秘密は教えられません!
「そんな、僕と君の仲じゃないか。秘密なんて水臭い」
どんな仲ですか!
「(君が)産まれる前からの仲?」
そりゃ、時空歪めたからって、勝手に目をつけてきただけじゃないですか。しかも、その時私あなたのこと全然知らなかったですし、思いっきり一方通行。そんなの仲っていいません!
「そう?じゃ、これからの仲ってことで」
ひぃぃぃぃ、ち、近いです、近いです!
しかも訳がわかりません!なんですか、これからの仲って!
「細かいことは、気にしない。ということで、どういうことか教えてもらえる?」
だから秘密です!!
というやりとりをS氏が飽きるまで延々延々繰り返し………
ちなみに、秘密は守り通しましたよ。Sという省略された言葉の意味まではわからないだろうという私の勘は当たったようです。
頑張った、私!偉かった、私!うわぁ~い!!
………………………虚しい。
なにはともあれ、はぁ、疲れた。