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生後100日目を迎えたようです

 といっても、そんなにすぐに育つはずがありませんね。相変わらずベッドから天井を見上げています。

 あぁ、でも毎日運動(大泣き)と健全な睡眠を繰り返していたお陰か、前よりも目を開けていられる時間が長くなってきました。

 生活的には、天気の良い日にマーラが短い時間庭へ日光浴に連れ出してくれることができた以外は特に変わることもなく平和に過ごしております。

 あえて申し上げるのであれば、赤子であれば当然受けなければならない日常生活の諸々のお世話について精神的に日々のダメージが蓄積されていってはおりますが…そこは時間が解決してくれるのを待つ以外に方法は無いですよね。そうですよね!頑張れ、私。

 あっ、ちなみにマーラというのは私が泣いた時にいつも一番に駆けつけてくれる乳母です。「慈愛に満ちた人」という表現がぴったり当てはまる優しい人で、どんなにぐずろうとも嫌な顔一つせずに優しく接してくれます。

 つい最近までいつも側にいてくれる人ということしかわかってなかったのですが、先日この家にお客様(というには、ものものしい雰囲気だったので、本当にお客様かどうかはわかりません)が訪れた時に判明しました。

 母親ではないのだろうと薄々勘付いてはいましたが、確定した時はやはり落ち込んでしまいました。でも、マーラがとても心配そうな顔をしていましたので、頑張って元気を取り戻したいと思います。

 ところで、今日はいつもおっとりのマーラが朝から急がしそうに動きまわっています。

 私も普段よりずっとおめかししていて、いつもと違う様子に、運動(大泣き)をするタイミングをつかめずぼんやりと眺めています。

 ―――あぅー(大変そー)

『今日は授珠じゅじゅの儀だからね』

 ―――う?(ん?)

 気がつけば、私の隣に大人の手の平サイズの灰褐色の毛に覆われた謎の球体がフワフワと宙を浮いていました。触り心地よさそうですね。あと、ひものようなものがついてフリフリしていますが………シッポ?

 私の疑問のポイントを勘違いし、くるりと回転すると丁寧に説明してくれます(あっ、体についてたのは、やはりシッポだったみたいです)。

『聞いたことない?出生から100日経って行う儀式。魔力の有無を確認し、少しでも魔力が検知されるようなら魔力が制御できるようになるまで魔力抑えの珠を授かるやつ。』

 ああ、そういえば前世で聞いたことありますね。

 多くの人には微力ながらも魔力を持って産まれます。水に小さな波紋を浮かべることができる程度のものなので大人になれば、自然と制御できるようになりますが、赤子や小さい子の場合は制御が難しいため、生後100日を迎えた時に魔力抑えの珠を持たすことになっています。

 100日待って儀式を行うのは、産まれて間もない赤子に魔力抑えを与えて、ただでさえ不安定な赤子の生命力を弱らせてしまうリスクをさけるため。これは、持って産まれた魔力は大切な生命力の1つであるという考えからきています。

 儀式を受けるまでは魔力無効の結界が張られた場所で過ごし、その後は、一部の例外を除いて家族のもとへ帰され、家族との生活が始まります。

 前世で知識としては知っていましたが、実際に経験するのは初めてです。

 マーラが朝から忙しいのは、その儀式の準備だったのですね。あれしてこれしてと呟きながら慌しく動いています。

 しかし、もっと事前準備しておけば、当日慌てることもないのに。

『ん~、なんか当日準備することに意味があるらしいよ。あくまで100日を祝う儀式なんだから、100日目で全部準備するのがシキタリとかなんとか。人間のシキタリって形式だけが先行しているものもあるから、本当に意味あるのかよくわかんないけど』

 詳しいですね。

『まぁね~。こに来ることが決まった時に色々勉強してきたから』

 おっ、モフモフさん。顔はわかりませんが、おそらくドヤ顔をしているとみた!

『ふっ、ふっ、ふっ、さて、どうでしょうー?ところで、一応聞くけどモフモフさんって?』

 ―――あぅあぅ(モフモフ)

 灰褐色の毛に手を伸ばすと、モフモフさんは長い沈黙の後「君、子供に名前付けるのはやめた方がいいよ」と言われた。なぜ!?

 不満があるなら、名乗って下さいな!

『名前はあるけど教えることはできないから勘弁して。とはいっても、それ以外に名前なんてないし、君に名づけを任せても同じようなセンスの名前しかでてこないだろうから………う~ん………い~よ、モフモフさんで。』

 ………本当は嫌だけど、とっても嫌だけど、気に入らないけど………

 こちらに背を向けていつまでもブツブツ呟いています。しかも、名前のセンスを疑われました。失礼な。

 そこまでいうなら別の名前考えようじゃありませんか。

 改めてモフモフさん(仮)を見つめ、呟いてみました。

 ―――………ぅぁぅぁぁぅ(………フサフサさん)

 その瞬間、モフモフさん(仮)は大きな声で言いました。

『う~わ~、モフモフさんって名前か~わ~い~い~。いい名前をつけてもらえて、最高の気分だよ~』

 棒読みですね。

 出会った時は元気よく揺れていたシッポが下がりっぱなしですよ。

 それはさておき、これでモフモフさん(仮)の名前が正式にモフモフさんに決まりました。どうぞよろしくモフモフさん。

『うん、よろしくね~』

 よろしくといってる割によろしくする気が見受けられません。いつまで背を向けているんですか!挨拶する時は、こちらを見るのが礼儀です。

『うん、ちょっと、お空を見上げていたい気分なんだ。ほら、青いお空が見えるよ』

 そうですか。私には茶色い天井しか見えません。

 さて、それはそうと、普通に会話してますね。もしかして、心の中が読めるのですか?

『その通り!えっへん!』

 そうですか。で、何故ここに?

『う~ん、何から話せばいいかな。詳しい話は長くなってしまうんだけど、簡単に言うとね、君、このままだと5~6年で死ぬよってことを伝えに来たんだ』

 ………………………………………………………………………………………………………………はい?


新たな登場人物(生物?)により何事もなく100日を迎えたことを知りました。

かわいい名前だと思うんだけどなあ。モフモフさん。そして考えた末のフサフサさんも、一押しだったので却下されて内心残念がってます。


ちなみに授珠の儀はロザリア時代に本人も経験済みですが、当然本人が覚えているわけもなく、初体験となります。


次は、嫌なカウントダウンです



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