アスカのライブ!(3)
照明が消えると同時に、会場は熱狂する
その次の瞬間の照明が照らされると――
『アスカちゃーーん!!』
「はーーーい!!」
会場中からの大合唱が響き、その的であるアスカも物おじする事無く、笑顔で手を振りながらその声に応える。
「今日は来てくれて、ありがとう! それじゃあ早速だけど、皆とボク達のカーニバルの始まりだ―!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!』
サンダー・ホーンのスタートは、アスカのギターで始まる。
ギターを書き鳴らす音が響き、それに続く様にベース、ドラム、キーボードが調和を始め、曲が始まる。
「……すっごい熱気だなあ」
「舞台に立ってもないのに、すごいプレッシャーだよ」
「……あうあうあ」
「みなも先輩、無理に声を出そうとしなくても大丈夫です」
「――相変わらず……いや、俺が受け持ったイベント以上だな」
「ホント、舞台に立ってもないのに、ずんと腹に来るわ」
前列、特等席に宛がわれた面々。
つぐみは圧倒され、みなもは声を出せず、歩美に宥められ、龍星は以前を思い返しながら圧倒され、光一は腹の奥底に感じる重みに圧倒される。
「……」
その中で、奏では黙ってアスカに魅入っていて、アスカの一挙手一投足から目を離さなかった。
「いつか……いつか、私だって」
アスカが今いる場所に、いつか辿り着きたい――そう願いながら。
「――やっぱりすごい」
「宇佐美姉ちゃんも、やっぱりアスカ姉ちゃんに憧れてるの?」
「勿論――超新星何て言われてても、あたしまだ1年生だから。アスカさんに一番近い挑戦者って立ち位置に、恥ずかしくないよう頑張ってる所」
「ふーん」
「まあ今はそれより……」
裕香を伴い、宇佐美は舞台裏でアスカのライブを見ていた。
と言うのも……
「――ふーっ……」
頭にタオルを被り、汗がびっしょりの声を掛けずらい雰囲気の裕樹が、宇佐美達の後ろに控えていたが故に。
「――あんなユウ初めて見た。よっぽど危ない事が起こってるみたいだけど、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。ユウ兄ちゃんがいるんだから、このイベントもアスカ姉ちゃんも大丈夫」
「――そうだね。ユウも本気みたいだから、大丈夫……だよね」
「――良いな? 曲が終わり次第、襲撃を掛けるぞ」
「けど大丈夫か? 朝霧裕樹が来てるってのに」
「とりあえずは目下の整理だ。保安部は観客を盾に足止め、榊龍星と久遠光一は俺達で仕掛ける……ヘッドに連絡は?」
「ああっ。さっきの偵察の後でな。今頃総出でこちらに出向いて貰ってる」
「――やれやれ。どれ取っても、割に合わねえ仕事だぜ」
「そういうな。正道も邪道も、仕事は仕事だ」




