アスカのライブ!(1)
学園都市第1コンサートホールにて。
「……当然の様にここ何だね」
「? ろうしたんれしゅか? 宇佐美ちゃん、奏ちゃん」
「このホール、学園都市で1番大きなコンサートホールで、ここで個人イベントを開くのは芸能科学生にとって一番の夢って言われてるんです」
「流石、アスカさんだなあ……私もここでいつか」
本日、アスカ・ホークアイ所属バンド“サンダー・ホーン”
アスカの電子召喚獣、雷の一角馬型のイクシオンをシンボルにしたそのバンドは、ギター兼ボーカルを担当し、学園都市の音楽部門のトップに君臨するアスカ・ホークアイを中心とし、抜群のチームワークと音楽性で人気なバンドグループ。
そのライブチケットは勿論即日完売となっており、アスカに特別招待を受けたメンバー達は――
『走らないでください!!』
『ご来場のお客様はまず受付でチケットを提示し、リストバンドを受け取った後に入場してください!』
『受付は2列に並んで! コラそこ、何やってるんですか!!?』
『入場口はこちらに――だから走らないで!!』
『救護室はこちらとなっております!!』
入場口の喧騒は、ごった返す人波に所々で起こる取っ組み合いで、それらの対応と救護に忙しない保安部機動部隊員。
拡声器から聞こえてくる声は、案内に交じり注意の怒声も響いてくる。
「――なんだかすごいね」
「アスカのライブは、学園都市でも屈指の大規模イベントだからな。保安部イベント警備部門だけでは手が回らんから、機動部隊も2部隊は出張らんとままならんそうだ」
「すごいなあ……そう言えばお兄ちゃんは、以前アスカさんのライブの警備やったことあるんだよね?」
「――今までで一番高い給金だったが、あれでは割に合わん位に大変だった」
「……」
龍星がひきつった顔での答えに、つぐみは初めて見る顔だと思いつつ、唖然とした。
「――さて、光一。俺達も並ぶか?」
「いや、俺達は並ばなくていいみたいだ。ほらここ」
「ん?」
話をそらす様に龍星が、はぐれたら大変とみなもに歩美と手を繋いでる光一に問いかけ、光一は一旦みなもから手を離して、D-Phoneの画面を見せる。
「俺達は関係者扱いとして、関係者用の入り口から入って良いって」
「――良いのかそれ?」
「良いって書いてあんだから良いんだろ。招待状にそれぞれ、関係者用の入場リストバンドが電子ツールとして添付されてるから、さっさと具現しよう」
「――そうだな」
それぞれが戸惑いつつも、各自のD-Phoneを取りだして、招待状の添付データを起動して、リストバンドを具現化し手に装着する。
「入場者は赤だけど、私たち青なんだね?」
「区別する為に色を変えてるんだよ。同じだとわからないから」
「それじゃ、はぐれないように気をつけながら行くか」
ひばりにべったりとひっついてる裕香と、そのひばりと手を繋いでる裕樹が、宇佐美の手を引いて歩きだす。
「あっ、ユウ待ってよわっ!?」
宇佐美は慌てて裕樹の後を追いかけ――躓いてしまい、裕樹の顔を見上げるように抱きつく形に。
「大丈夫?」
「平気……と言うかいつも思うけど、あたしが密着しても平然としてるね?」
「そりゃ、これ位の距離までひっつかれる事なんてザラに――」
「――はいはい、聞いたあたしがバカだった」
「けどこんなでかい胸がひっつくのは始めて――」
バチ――ン!!
「そう言う事を口にしないで! 増して他の人のと比べないで!!」
「裕樹さん、そう言うのはセクハラですって、何度も教えた筈なんですけど」
「……ごめんなさい」
ひばりと宇佐美のダブルで怒られ、流石に裕樹もダメージを受け、ビンタ痕の着いた顔のまま俯いてしまう。
「全くもう……」
「ホントなおらないなあ、この人の」
「? 支倉先輩、ユウのこの悪癖の矯正やってるんですか?」
「そうだけど……この通り、全然成果上がらなくて」
宇佐美は内心、筋金どころか鉄柱入りだなあと思っていた。
「――はあっ。多少なら許してあげるべき、なのかな?」
「ん? 何が?」
「なんでもない――それより、意外とむっつりの気があったんだね」
「俺だって男だっての。それに別の物に例えて、意識しないようにはしてるけど、やっぱりでかいと印象に」
「ゆ・う・き・さん?」
「……っとと」
「別の物? ――まさか肉まんとか饅頭とかに例えてるとか……」
「違う違う。相撲取りの……」
バチ――ン!!
「肉まんとかの方がマシじゃない!!」
「いや、嫌な物に例えれば変な気起きないと思ったから……」
「こっちも嫌よそんなの!!」
「おーい、そろそろ関係者用の出入り口……って」
「あの通り仲良しムードで、聞いてない様だぞ?」
「じゃあほっといて行こうぜ」




