言葉の刃(4)
「どうだった?」
「とてもいいお店でした。色々と勉強も出来たし、最高でしたよ」
「熱心だね」
「料理は好きですから」
裕樹の予約した店は、当然ながらひばりの給料では手も足も出ない高級レストラン。
料理も美味しく、料理の道を志すひばりにとっては夢の様な一時で、紹介した裕樹もそんなひばりに満足した笑みを浮かべる。
「ん~……」
「おっとと」
帰り道中で船をこぎ始め、今は裕樹の背なかですやすやと眠る裕香に向け、ひばりは柔らかな笑みを浮かべ――徐々に沈んでいく。
「――遅くなりましたけど、ごめんなさい」
「ん? どうした?」
「あの時、あたしの所為で裕樹さんに変なレッテルをはっちゃって……」
「ひばりが悪い訳じゃないさ。元々あの子、裕香とは仲が悪くて――」
「でも、同じ事はこれからもあります。それにもうすぐ……裕香ちゃんにも」
裕香はまだ初等部の成長期であり、身長の伸びしろはまだまだ保証がある。
ひばり自身は気にした事はなかったが、今になればどこかで恐怖を感じていないと言えば、ウソになる。
最も、身長を超えたからと言ってどうこうなると、この兄妹を疑う気はさらさらなかったが――それでも、どこかで不安を覚えてしまう。
何より、答えはまだみつかていない物の、良い子でありたいひばりにとっては、眼の前の人に自分の所為で変なレッテル貼ってしまう事だけは、どうあっても避けたい事柄。
この兄妹の輪から離れる事は、正直な話辛かったが――意を決して、ひばりは。
「――やっぱり、ここで終わりにしましょう。あたしじゃ裕樹さんに、変なレッテルを張って迷惑かけるだけで……」
「――俺、ひばりの事好きだよ」
「ふぇっ!!?」
予期せぬ返答に、ひばりは表情が暗い物から一転して、ボンッと爆発するかのように顔を真っ赤に染め上げた。
「いきなりなんですか!?」
「しーっ、裕香が起きるだろ」
「あっ、ごめんなさい……じゃなくて、どういうつもりです?」
「――ひばりばっかりが変な重荷を背負ってばっかの現状に、いい加減終止符打ちたい。だから、曖昧な立ち位置はもうやめにする」
裕樹は膝をついてひばりと視線を合わせ、ひばりの手を握る。
「ひばりにとっての良い子の答え、俺と一緒に裕香の良い兄姉になる事にしてくれ」
……ここで一旦の終止符うとうかなと現在考え中
もう少し、地盤固めてからにすべきか
それとも、ここで新たな一歩とするか




