表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/402

言葉の刃(1)

今回は鬱展開です

「――裕樹さんは、裕香ちゃんの事が好きですか?」

 時分は夕方。

 本日は特売日と言う事で、ひばりは行きつけのスーパーで裕香と一緒に買いものをし、その際あった裕樹と一緒に帰宅の、人通りの少ない通りの道中。

「――どした、いきなり?」

「聞いてみたくなったんです」

「好きに決まってるだろ。可愛い妹なんだから」

「うん、私もユウ兄ちゃん大好き」

「人を好きになるって、どんな感覚ですか?」

 ひばりの質問に裕樹は疑問符を浮かべ、すぐに腑に落ちた様にああっと言う表情に。

「こんな感覚」

 それより早く、裕香が買い物袋を落とさない様に気をつけながら、ひばりに目立たないように寄り添った。

「私はね、ぎゅーっとして欲しいとか、一緒の時間がたくさんほしいとか、かな?」

「裕香ちゃんは、そんな感じ?」

「うん。ひばり姉ちゃんは違うの?」

「――違わないよ。あたしも裕香ちゃんにはぎゅーっとして欲しいし、一緒の時間がたくさん欲しいって思うから」

「なんか俺より、裕香の方がひばりのケアには最適かもしれないな」

「そうかも、しれませんね」

 裕樹はひばりと顔を見合わせ、笑い合う。

「――今ね、私すごく幸せだよ」

「そう?」

「うん……ユウ兄ちゃんがいて、ひばり姉ちゃんがいて、こうして大好きな人と一緒に居られるって、すごく幸せだなって思う。だから、ずっとこういう時間が続けばいいなって」

「うん。あたしも……」


「――朝霧さんじゃない」

「……!」

 声を掛けた相手――クラス委員長を見て、裕香は珍しく嫌悪感をあらわにした。

 ひばりは初めて見る裕香のそんな表情に動揺し、裕樹は見覚えのある顔に苦笑する。

「どっ、どうしたの裕香ちゃん?」

「……行こ、ユウ兄ちゃん、ひばり姉ちゃん」

「――姉ちゃん? まさかその子、そんなで朝霧裕樹の彼女とか? ……うわっ、ロリコン」

「――!?」

「やめてよ! ひばり姉ちゃんはれっきとした、高等部の先輩なんだから!」

「そんなのが? 驚いた。朝霧裕樹がそんな変態趣味だったなんて、サイッテ……」


 ビシっ!!


 中傷発言以上に、ひばりはショックを受けた様に眼を見開いた。

 裕香が少女に、怒りをあらわにした表情で頬をはたき、襟元を掴みあげている。

「ユウ兄ちゃんとひばり姉ちゃんに謝って!」

「何すんのよこの!」

「謝ってって言ってるでしょ!! 頭いいくせに、日本語わからないの!!?」

「やっ、やめろ裕香!」

 2人して取っ組みあいになり、慌てて裕樹が間に割って入り、腕を噛まれたり掻き毟られながら、無理やり2人を引き剥がす。

「コラ! 何やってるんですか!!」

「――あっちゃー」

「あれっ、朝霧さん? ――事情聴取の為に、詰所に来ていただけますか?」

「――わかった」

 保安部員に手伝って貰いながら未だに暴れる2人を抑えつつ、裕樹はふとひばりに目を向ける。

 ――ショックを受けた様に俯いて、今にも泣きそうな雰囲気を漂わせながら、呆然と佇んでいるひばりに。

「……厄介な事になったな」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ