屋台通りの事件(3)
その後の調査結果 黒沢スポーツ自体はシロである事が判明。
全てはあのスカウトが、黒沢スポーツの看板を利用し、モデルの仕事をでっち上げた上での犯行である事が発覚。
とはいえ、流石に黒沢スポーツもお咎めなしとはいかず、人事システムの見直し案の提出と、被害に遭った女性と屋台通りへの損害賠償を、保安部の立会の元で支払う事となり、保安部の依頼仲介部署(主に仕事の依頼に関してのトラブルを扱う)に、新業務が付け加えられる事となる。
「以上が、この事件に対しての報告となります」
「企業自体、利用されただけなのに――気の毒ね」
「雇う側の責任って奴だよ」
「――気をつけなきゃね。それで、肝心の犯人達は?」
「その後、芋蔓式で全員捕らえた上で、今頃全員が何らかの懲罰業務を遂行してる頃だろ」
「懲罰業務?」
「そう。懲罰房に備え付けられた農場で畑を耕してるか、はたまた作業場で鋳造や溶接なんかを勉強してるか……ってところ」
勿論懲罰業務と言っても、“更生”を目的とした場として設けられたのが懲罰房であり、過酷な労働を強いる事等しないし、してはならないと言う生徒会肝いりの規定もある。
「随分と詳しいんだね?」
「これは保安部及び、俺みたいな用心棒稼業にも定められた、倫理規定にも関係する事だから、しっかりと勉強しなきゃいけないんだ。大神総副会長曰く、責任を無意味に重くするより、自覚させる措置の方が重要だ--ってことでな」
「意外と、自由奔放って訳じゃないんだね?」
「“欲望とは暴力、成長とは差別、自由とは外道”――以前相対した椎名九十九の言葉なんだけど、そう言う考えが生まれた事からの教訓としての措置。それに基づいて、そんな考えが再び根付かないように、秩序とは人道的な倫理観を持っている事を前提に…」
「――ねえユウ兄ちゃん、何言ってるか全然分かんない」
「つまり、俺たちみたいに力のある人間が、犯罪者だから何をやっても良い、何て考えを普通にさせないためのルールが、学園都市にはあるって事。裕香も、法律を理由に人を差別する子にならないよう、気をつけるんだよ」
「はーい」
現在、損害賠償を元に屋台通りは後日改めて、流しそうめんを開始。
宇佐美の開会宣言とチャリティライブにより、気分の高揚した屋台通りは、流しそうめんとは思えない程に、盛り上がっていた。
「ん~♪ おいし~♪」
ただ今の会話は、全部裕樹、宇佐美、裕香が並んでの流しそうめんの場にて。
「結構良いお兄さんしてるんだね。兄さんには負けるけど」
「そりゃこんな良い妹がいるんだから、当たり前だろ」
「う~ん……裕香ちゃんには、流石に負けちゃうか」
裕香の口元についてるつゆをハンカチで拭ってあげながら、宇佐美も納得するように頷いた。
「ありがと、宇佐美ちゃん」
「……ねえ、裕香ちゃん。あたしも他の皆みたいに、姉ちゃんって呼んでくれない?」
「わかったよ、宇佐美姉ちゃん」
「姉ちゃん、かあ……良い響き」
「現在お姉ちゃん募集中だけど、宇佐美姉ちゃんどう?」
「裕香ちゃんみたいな子が妹になってくれるんなら、本気で考えちゃおうかな?」
「ホント? やった!」
宇佐美のファンである事も含め、喜びを体で示す裕香に宇佐美は顔をほころばせる。
ふと宇佐美が見ると、裕樹は我関せずと言わんばかりに、そうめんを啜っていた。
「何よ? ちょっとは反応したら?」
「ノーコメント」
「えー! ユウ兄ちゃんも、少しは喜んでくれても良いじゃん!」
「こんな場所で言えと?」
「え?」
ふと宇佐美が周囲を見ると、反応こそそれぞれ違うが男女問わず注目を集めていた。
そこで自分が一体何を言ってたかに気付き、ボンッと音を鳴らすかのように宇佐美は顔を赤くした。
「あいつ等、堂々とやらかしてんなあ」
「それが裕樹だろ」
「まあそれより、裕香ちゃん嬉しそうだね」
「無理ないれしゅよ。裕香ちゃんって、宇佐美ちゃんのファンらって、良く話してたくらいれしゅから」
光一、龍星、つぐみ、みなもは少し離れた所で、そうめんをすすりながら、それぞれの感想を言い合っていた。




