過去との対面(4)
「――それじゃ、あたしの罪と良い子である事は、どの道ジレンマになったんですね」
自嘲気味にそう呟いて、眼を虚ろにそのままテーブルに突っ伏した。
「そうならなかったのは、ただ単にずっと腹の中に抱えたまま、自分1人の答えでとどめたから、だろうな」
「――まるで、今までの生き方その物も、お母さんへの贖罪の気持ちも、この罪の意識以外の全部否定された気分です」
「全部って事はないよ。さっきも言ったけど……」
「なら――しばらく、裕香ちゃんを預からせてください」
突如遮られた事以上に、裕樹は眼を丸くした。
「裕香を?」
「さっきも言ったけど、今更あたしに良い子以外の生き方なんて出来ない。けれど、もうあたしにとっての良い子の定義も揺らいだ今……裕香ちゃん以外に、良い子に繋がる物なんてわからないんです」
「――わかった……帰ってきたら、すぐ準備させる……必要もないか」
「そうですね――そろそろお昼だから、今日はあたし作ります」
「いやいや、お客様にそんなことさせられ……ごめん、頼む」
裕香用の踏み台を整え、ひばりは冷蔵庫を見回してメニューを決めて、調理を始める。
その間裕樹は、この前買った外国語表記の本とノートを取り出し、ペンを走らせる
「――今回の事で、思った事があります」
「何?」
「あたし、お母さんがどんな思いであたしにあの言葉を遺したか……ずっと良い子である事だけに執着して、考えもしなかったんです。相談するのも迷惑になるのが怖くて、お父さんにもずっと……裕香ちゃんの事も、同じ理由で」
「そう」
「――考えてみたら、迷惑かどうかでばかり考えて、人を信じるって言う事を、ずっと忘れてた気がします。今更だけど、良い子って本当にそう言う物かなって……」
「気付けたんなら、手遅れなんて事はないと思うけど?」
ペンを走らせる手を止めないまま、裕樹はひばりにそう返した。
無論ひばりも、調理の手を止めてはいない。
「俺もさ、保安部クビになって今の稼業が落ち着くまで、色々あったからね――当時は俺も、1人で売り出そうと躍起になってるバカ野郎だったから、尚更に」
「――そうですね。まだあたし自身を許せたわけじゃなくて、まだ沢山の葛藤はあるけど、それでも……」
「ただいまー!」
「おっ、帰って来た」
「――裕香ちゃん、食べて帰って来たのかな? そうじゃなかったら、もう1人分作らなきゃ」
それでも、今までとは違う良い子になろうと思える。
それを呑みこみ、料理しながらではあるが、裕香を出迎えた
一先ずここで一区切り
で、ここから裕香とひばりの共同生活の始まり始まり。
色々なこと、もちろん事件なども起きますが--それはこれからのお楽しみ
ひばりんフラグに一歩……進めたかな?




