朝霧兄妹の日常(1)
「ただいま」
「お帰りなさい、ユウ兄ちゃん」
宇佐美を送り届ける為に、裕樹は裕香より帰りが遅い。
そう言う時はD-Phoneで連絡をとり、裕香がひばりに習った料理を夕食に振る舞い、あるいは裕樹が帰りに買って帰る。
「今日は何?」
「シチュー。ひばり姉ちゃんも絶賛だよ」
「そりゃ楽しみだ。じゃあ俺は風呂沸かすよ」
「うん、お願い」
朝霧兄妹は、2人で暮らしている。
初等部の最初の1年は寮に入って、基本的な家事を勉強する事になる為に、裕香は家事は一通りが出来る。
役割は一応分担してはいるが、子供の身で無理な事は裕樹が担当している。
「はい、いただきます」
「頂きます」
そして、料理は専ら裕香の担当。
ひばりに仕込まれ、みなもの手伝いもできる腕前を持っていて、朝霧兄妹の家の台所は専ら裕香が主となっている。
「なあ裕香、本格的な料理の将来とかは考えないの?」
「考えたよ? けど私の料理って、こうやってユウ兄ちゃんと一緒に食べる温かい料理のままで良いかなって、満足してるから」
「そっか――ありがと」
そして、美味しく夕食をいただいた後は片付け。
これ位はやらないとと、裕樹は流しに食器を……。
「ユウ兄ちゃん」
片付けようとした所で、裕香が裕樹に歩み寄って、裕樹に向けて両手を突き出す。
はいはいと裕樹は頷いて、裕香を抱き上げてやると、裕香は裕樹の首に手をまわしてぎゅーっと抱きしめてくる。
「――いつまで経っても、甘えん坊だな」
「甘えん坊だから甘えるんだもん。ぎゅ~♪」
「洗い物があるからここまで、風呂に入ってきな」
「はーい」
裕樹に下ろして貰い、裕香は着替えを取りに自分の部屋に――戻る前に、振り返る。
「一緒に入りたい?」
「もう10歳なんだから、1人で入りなさい」
「ぶ~、反応がつまんないよ。それにちょっとは動揺してよ~!」
「つまらなくても良い。それに誰が10歳のガキに風呂誘われて動揺するか」
「ガキって酷いよ! そりゃ、みなも姉ちゃんやひばり姉ちゃんには負けてるけど、学校じゃ1番最初にブラつけてる勝ち組なのに」
「小学生があの2人と比べる事自体間違いだ。良いからさっさと入ってこい」
「はーい――やっぱりまだまだかあ……」
自分の胸元に手を当てて、むくれながら裕香は踵を返す。
「……あれ?」
「? どうかしたの、ユウ兄ちゃん」
「いや……裕香以外の会話だと、こういう時大抵ツッコミかビンタが入る所だなあって」
「――? どういう事かな?」
「さあ?」
見る人が見れば、こういっただろう光景。
ああっ、間違いなく兄妹だ、と
そう言えば、兄妹での話が全然なかった
と言うわけで、だしてみる事に。




