朝霧裕香の華麗にして波乱万丈な休日(3)
少し時は過ぎて、お食事。
内装はファミレス風だったものの、傾向としてはイタリアンだった為、裕樹はペペロンチーノと明太子、ひばりがカルボナーラ、裕香がミートソースのパスタを。
更には、裕樹が3人で食べられるサイズのピザも注文。
「あの、良いんですか? あたしの分まで」
「良いよ。メシは楽しく食わないと」
「わーい、いただきまーす」
ピザが並ぶと、裕香は喜んで手に取りひばりに勧めて、ひばりは柔らかく微笑んでそれを受け取り。
「なんかいいな、こういうのも」
その様子を、ピザを食べながら裕樹はのんびりと見つめる。
それから時間がたつと……
「ユウさんって、結構食べますね」
「そう? ――って、ひばり達から見りゃ、普通にゃ見えないか」
「そうですよ――あたし達から見ればって言うと、やっぱり保安部のご飯が超大盛りって話、本当なんですか?」
「そうだよ。この前なんか5kgのステーキでさ――」
先ほどとは打って変わり、裕樹とひばりの会話が花を咲かせていた。
「んー……うん♪」
その様子を見つめる裕香は、ミートソースパスタを食べつつ上機嫌で見詰めており、パスタの美味しさもあって、蚊帳の外にも関わらず上機嫌。
「あ……っ!」
そんな裕香が視界に入り……
ズキンっ……!
ひばりは裕香の願いを素直にうれしいと思う半面で、奥底で何かが痛みを訴えていた。
「――? どうしたひばり?」
「……いえ、なんでも」
「……?」
突然雲行きが怪しくなった事に、傍から見ていた裕香も先ほどの上機嫌から一転し、表情が落ち込んでしまう。
「…………ごめんね」
「……」
その後の食事は、あまり楽しくとはいかなかった。
食事が終わりレストランを出て、初等部対象のブティックを目指す途中。
裕香が参考にとウィンドウショッピングを楽しんでるのを、裕樹とひばりが見守りつつ……
「――可能性はあるって、思って良い?」
裕樹はひばりに、そう問いかけた。
「――何の、ですか?」
「いや、俺もさ――裕香があんなに姉を欲しがってて、あれだけひばりを慕ってるんなら、本気で考えようって思ってさ」
「――からかわないでください。大体さっきだって、兄妹にしか見えないって言われたばかりなのに」
「ひばりに冗談でそんな事したら、俺は裕香の兄じゃ居られなくなるよ――俺の事が信じられないならそれで良いけど、裕香の事に関しては信じてくれない?」
「……」
「自分で言ってて情けなくなってきたな。妹頼らんと女1人口説けんなんて」
「いえ……あたしだって、裕香ちゃんを妹の様に思ってますし、ユウさんが裕香ちゃんを大切にしてる事は、良くわかってます」
裕樹は今度は膝をついて眼を見据えて向き合う。
「可能性はあるって、思っても良い?」
「――ユウさん、あたしは……!」




