学園都市の特殊事情
学園都市には、四神と言う特別な家系出身の4人の少女が在籍している。
彼女たちは普段こそそれぞれ、学園都市の学生らしいそれぞれの生活を営み、ごく普通の生活を送っていた。
しかし有事となれば――
「集まったな?」
生徒会SP身辺護衛部隊長、御影凪。
4人同様に特別な家系出身である彼は、表向きは生徒会役員の護衛達を纏めあげる一部隊長を務め、その裏では少女たちを纏めあげる役割を与えられた男。
彼の指揮下にて、学園都市の守護を担う精鋭となる。
「私達が一堂に会するのも、久しぶりですね」
「以前はフラウが加わる事の報告だったね」
「せやったなあ。個人ではちょくちょくはあっとるけど、やっぱにぎやかなのが一番や」
「その辺にしておけ。この場はお茶会では……」
南波、辰美、フラウが盛り上がる中で、武瑠がそれを咎めようとし――。
「構わないだろう、武瑠。これが話しやすい雰囲気なら、無理に壊す必要もない」
「……凪殿がそう仰るなら」
凪に柔らかく制される形で、下がった。
その柔らかな物腰と紳士的な態度から、生徒会では大神白夜、一条宇宙に並ぶくらいに女性からのうけが良い男でもある。
「さて――議題は、東城太助の勢力についてだ」
「武瑠とフラウは、もう接触したんだっけ?」
「せやな。ウチはクリス姉さんと一緒に、シラヒゲって名の鼟餮型の電子召喚獣を連れた、初等部位の女の子と交戦したで。相性悪かった事もあって、苦戦した」
「私は直接本人とだ。クロカミと呼ばれる、檮昒型と交戦した――苦戦を強いられたのは、私も同じだ」
「残る四凶は、窮奇と渾沌。そして――」
「彼の仲間と思われるS級手配犯、鮫島剛と――椎名九十九、ですね」
九十九の名を出した南波の表情は、彼女には珍しく険しい物だった。
「どしたんや?」
「そう言えば南波って、椎名九十九と因縁があったんだっけ?」
「何? ――あの、狂人とか?」
「ええ……あの男とは私が。愛国心どころか、人としての善その物を侮辱した事だけは」
「そこまでだ」
南波の言葉を、凪が制止する。
その表情を、有無を言わさないと言わんばかりの厳格な物に変えた上で。
「――何故です? 私はあの男だけは許せません!」
「大切な物を侮辱され、それに対する怒りを抱くのはわかるが……誇り高き朱羽の娘が、そんな顔で事に当たるのは感心しない」
「ですが……!」
「それに、鏡を見てみろ。その顔で、愛国心や人の善を語って説得力があると思うか?」
「うっ……」
「愛国心、人の善、それらを尊ぶのは結構だが――それらを抱く事が出来るのは、人である内だ。だから、人である事を忘れるな」
「――はい」
南波の険しかった表情が解けると、凪も同様に表情を解く。
「――おーっ、凪さんかっこええな」
「凪さんがボク達のリーダーだって、改めて実感するよ」
「――流石ですね、凪殿」
「人を纏める事とは、導く事にある……故に、導である事を果たしたまで」
「――承知。我等の行く末、凪殿の身心のままに」




