学園都市のすごろく大会(6)
「――結局、ゆさみん達はなしになっちゃったねい」
「仕方ないだろ。ゲームっつっても、雇い主を口説くなんて用心棒稼業の吟味に反するし、怜奈さんだって事情が事情だからなあ。ま、あれで十分だろ」
「――そうですね。と言うか、あれ本当に無自覚なんでしょうか?」
「「100%無自覚だろ(よん)」」
ウィンドウ越しに光一達は、ひばり達がまだ年相応に頬を赤らめ、裕樹の方を向いては顔を背けたりを眺めつつ、云々と頷いた。
「そだねい、本人の関係ない所で複雑にされちゃってるからねい。こればっかりは、今も昔もおねーさんにはどうにもならないよん」
「そうだな――さて」
ウィンドウを閉じて、光一がひょいと自分達のサイコロを放り投げた。
「それにしても、皆してかわいいねい。ひばりんもつぐみんもひかりんも、みーんな女の子って感じだよん」
「違いない」
「私もあんな風に口説かれてみたいです――勿論、2人きりで」
『ティータイム 一回休み』
「……こういうのもあんのかよ」
「……これは、流石に意外でした」
「まあVRの中だけど、ティータイムだよん」
自分たちの前に具現した、お菓子とお茶の乗ったテーブルとイスに、それぞれ座ってお茶を始める3人。
「へえっ、ああ言うのもあるのか」
「……あうあう」
「涼宮さん、落ちついてください」
裕樹の口説き場面に顔を赤くしたみなもを介抱する蓮華を尻目に、龍星がサイコロを持ちあげ放り投げる。
「蓮華は、ああ言うのは?」
「私は――怜奈お嬢様の御身と、お幸せを守れるだけで十分ですので、ああ言う事は」
「そうなんですか? 蓮華さんは綺麗で格好いいのに」
「格好いいから、女性にしか人気がでなくて。それに――」
『パズル』
眼の前に現れた、2mほどあるパネルの中央部に、1枚の15までの数字が書かれ、1つだけ欠けた部分があるパズルに、蓮華はゆっくりと歩み寄って、全体を見回す。
そして――明らかに考えながらではなく、決められた手順を行うスピード、それもかなりの高速でパズルを動かし、1分後には……
「怜奈お嬢様直属の側近ともなれば、文武両道――最高の武術と教養を兼ね備えていなくては、務まりません」
涼しい顔の蓮華の前で、1~15までの数字が綺麗に並び、ファンファーレが鳴った。
「そっ、それじゃあ、行こっか」
「そう、だね」
「じゃあすぐに」
3人は未だに熱が抜けきらない様子で、光がサイコロを持ちあげ放り投げる。
「――小さくても、かあ」
「――いつもなら怒る所だけど、それでもちゃんと女の子って見てくれてるんだ」
「……間違いなく嘘じゃないとはわかりますけど……不覚」
嘘ではないのはわかるし、そもそも3人して裕樹が嘘をつくと思っては居ない
だからこそ、恋愛方面に自信がない3人と言えど、きちんと通じたわけである。
「さて、ここでは……」
『仕掛け床、5つ戻る』
「え? ひゃあっ!」
「きゃああっ!」
「くっ……!」
つぐみ、ひばりが悲鳴をあげ、光は咄嗟の事ではあったが悲鳴を上げる事はなく、
「あれ? 5つ戻るって、確か……」
「ん? なんだ?」
所変わって着地点。
つまり、裕樹達が止まっているマスにて。
「え? あれって、もしかして……」
「ひばりさん達、では?」
「こりゃいかんわ!」
吹っ飛ばされてきたひばり達の姿を見つけた途端に裕樹が駆けだし、3人の着地点に先回りして――
「きゃっ!」
「ひゃっ!」
「くっ……!」
3人もろともに、裕樹が抱きとめた。
流石に小さいと言えど3人ともなれば、裕樹と言えども無事に受け止めきれる訳ではなく、踏ん張り切れはしたもののバランスを崩しかけ、たたらを踏む。
余談だが、ひばりは裕樹の胸に顔を埋める形で、そしてつぐみと光は裕樹のそれぞれ左右の腕で抱きとめられてる形となっていて……
「「「…………」」」
「――あれ? どうかした?」
裕樹の身体は無駄が無いほど鍛え上げられていた為、直に触れる男性の逞しさに3人して動揺しまくっていた。
「良いからおろしなさい」
「じゃあちょっと手伝えよ。これじゃ迂闊に手が離せないから」
「――これだけで企画した価値十分すぎる程あったなおい」
「いや、僕に言われても……」
「光のあんな姿、初めて見た」
にやにやとイベント好きの血が騒いでるらしい綾香に、話を振られて困惑する鷹久。
それと、同僚の想いもせぬ姿に唖然としてる大輔が――
『課題 これを砕け』
眼の前にドンと置かれた、氷の柱に眼を向ける
「よい、これはあたしがやるぞ」
「え? 良いの?」
「俺達がやっても良いぞ?」
「良いんだよ。良いトレーニングだ♪」




