聖ならぬ結婚式からの駆け落ち(2)
裕樹たちが入った部屋。
そこは……
「ーーサーバールームか?」
「これ……バットに木刀、鉄パイプ。でも、随分短い」
「あっ、見て! あっちのモニター」
「…………こわい」
数台のスパコンサーバーがおかれ、その側で無造作に並べられたサイズ的に子供用の道具。
そして、奥にあるモニターには、保安部に押収された中でも危険度の高い、百鬼丸やマリスといった違法召喚獣の姿が写されている。
「ーー多少埃が積もってる。最近人の出入りはなかったみたいだが」
「あの、ここってもしかして……」
「多分横流しでもしてたんだろうな。どうしてアキ自慢のプロテクト封印と管理システムを、アシもつけず掻い潜った、あるいはどんな権限で突破したかはわからんが、流石に見て見ぬふりは……」
「出来ないよね、普通」
と、裕樹にはすでに聞きなれた声が、割り込んできた。
「およびじゃなくても、ジャジャジャジャーン」
「「…………??」」」
「……うん、つまらなかったんなら謝る、だから変な人を見る眼はやめて。それと笠木アサヒ、せめて視線を合わせて」
場を和ませようとしたつもりだったが、盛大に滑ってしまった東城太助。
「…………だれ?」
「そういえば初対面だったね。僕は東城太助、君のお兄さんとは昔友達だったんだ」
「…………かっ、かさ、ぎ……アサ、ヒ」
「うん、よろしくーーそれと、結婚おめでとう朝霧くん」
「はっ? おい東城、一体どういう……」
「どこからどう見てもそうとしか思えないよ。まさかと思うけど、その格好の意味わからないとか?」
「あっ……」
裕樹はすっかり忘れてた、という顔で自身達が着てる白いタキシードとウエディングドレス、そして2人のフラワーガールの衣装を見回した。
「……………………///」
そして裕樹の腕のなかで、展開的に意識してなかったのを指摘され、耳処か全身まで真っ赤にして両手で顔を覆い隠すひばり。
それにつられるように、裕樹の顔も赤くなった。
「うん、流石に結婚の概念は理解してるか。とりあえず裕香ちゃん、ご祝儀の準備……じゃなかった。事情説明頼めるかな?」
「はい」
数分後。
「……はずかしいよぉっ」
「えーっ、そんなこと言わないでよひばり姉ちゃん。夢が叶ったみたいで嬉しいのに」
「あのね裕香ちゃん、こういうことは順序っていうものがあって、そもそもあたしじゃ……」
「…………おにい、ちゃんの……こと、きらい?」
「ううん、そう言うことじゃなくてね……大丈夫だよ、あたしよりもいいお義姉さんになってくれる人は」
「…………かわり、なんて……いない。おにい、ちゃん……そう言ってた」
女の子3人、そういう話をしている傍らで……
「ーー困るよ朝霧くん、君の失敗は今学園都市に直接衝撃を与える」
「返す言葉もない。それで、話を聞いてどう思った?」
「邪悪なる血に塗れし花嫁……無造作に選ばれた、ということは無いと思う。結婚式という形で、花嫁を何らかの媒体にするつもりだったか」
「じゃあ、これも関係してるかも、か?」
ここであった経緯と互いの目的を伝えあい、太助が邪悪なる血に塗れし花嫁の見解をのべると、裕樹が禍々しい形で処女宮の紋章の刻まれた黒水晶を取り出した。
「これは?」
「さっきひばりが拘束されてた寝台の下に置いてあったのを、一目見て直感的にヤバいと確信したからパクってきた」
「なるほど、じゃあそれをちょっと調べてみよう」
と、太助はゴーグルを具現して、あらゆる角度から見回して……なるほど、と頷いた。
「どうやって創ったかはわからないけど、これは悪意と結び付いたバグの塊だ。しかも最低ギガバイト級の」
「ーーなんだと?」
「邪悪なる血に塗れし花嫁の意味が理解できた。ヴァージンロードという名目で君の生き血を介して彼女にこれを埋め込み、人間を媒体とした凶獣を造り出すものなんだろう」
「嘘だろ、何であんなインチキサイコがこんなもの持ってて、しかもこんな使い方を」
「間違いなく、黒幕の手の上で腹躍りでもやってるんだよ」




