人の造りし神 VS 邪を喰らう獣
倦怠感に押し潰されつつ、こつこつとつくって参りました。
学園都市指定開発外区画、通称エイジ
未だに解明されていない何らかの要素でDIEシステムの庇護を受けられず、電子ツールや電子召喚獣といったものが具現できない現象、局地的な氷河時代アイスエイジからそう呼ばれている。
風力発電の風車と太陽光発電によるライフラインこそ確率はされているが、危険指定のDIEシステム系制御装置の凍結封印、管理区画となっていた。
路地は自律警備ロボットが管理し、居住区として建てられた建造物は窓はすべてが鉄板張りで封鎖され、入り口もそう簡単に破れない強固なもの。
そしてその区画はコンクリート製の分厚い壁に阻まれ、保安部第一機動部隊の管理下におかれている。
「……一体どういうつもりだあいつ?」
そのエイジの路地を、単身バイクで走る男ーー朝霧裕樹。
本来はどんな理由があろうと入れない場所だが、今回裕樹は総会面々に許可をもらって入っていた。
東城太助の呼び出しに応じるために。
「まああいつなら確かに、エイジを根城かなにかにしててもおかしくはないが……」
多分指定してきた地点だけ、管理システム止められてるか騙されてるかだな、と思いつつ少々開けた場所に到着して、バイクに乗せておいた武器を装着。
6本のスタンブレードと照明弾と信号弾、そしてナイフ数本と麻酔銃。
「おーい東城、来てやったぞー。出てこーい」
「はーい」
ガキっ!
「あっ、あれ? 引っ掛かったかな?」
「…………」
バキッ! ゴゴゴゴッ、ガゴンッ!
「……なんだそりゃ?」
「元は災害時の緊急避難用の地下室だよ。エイジには僕の研究成果もいくつか隠してあるから、その搬入時の居住区にさせてもらってる」
「……随分と大胆な木の葉を隠すなら森に、だな」
少々気が抜けるやりとりを裕樹と行う男、東城太助。
現状の学園都市水準を大きく上回るオーバーテクノロジーを駆使し、学園都市を暗躍する医者でありDIE技術者であり、学園都市最悪の手配犯である
「で、なんの用だ?」
「僕と一戦交えてほしい。もちろん本気でね」
「……お前ここがどこかわかってんのか?」
「ーー境界樹は実在し、僕はそれに触れてオーバーテクノロジーを手にいれた。頭がパンクせず、混濁こそしても自我が残った理由はわからないけどね」
「いきなりだな」
「まあいずれは、大神君と……もうすぐパワー・オブ・アースを手にいれるだろう凪くんにも話すよ」
そのとき裕樹は、やっぱこいつにも予想ついてんだな、と納得しつつ裕樹は呼び出した理由を悟り始めた。
「あまり驚いてないようだね」
「分家と言えど、四神の纏め役であり土を司る黄龍を従える凪以外が、土の人造神に選ばれることなんてまず考えられん」
「うんーーで、そろそろ僕も次の段階に進むべきだと考えてね。あの日境界樹によって変わったのは僕だけじゃなく、四凶たちもなんだ……その変化は、僕に自滅機構としての使命と運命を余儀なくした」
「自滅機構だと? まさか、四凶たちは……」
「そう、学園都市の繁栄に比例し、蓄積されていく悪意と結び付くバグより生まれし獣……凶獣になってしまっていた。しかも、暴力の敗北者から生まれた悪意を喰らって強くなる性質を持つ」
「ーーじゃあお前が今までとっていた行動は、四凶を弱めるため?」
「そう……知ってる? 利益の前では、善良も正解も等しく外道なんだよ。人の歴史は戦争の歴史ではあるけど、その過程を差別と暴力の繰り返しで済ませたその時……成長も可能性も、未来も意味は全くなくなってしまうんだ」
そこで太助が、白衣を脱ぎ捨てシン・スフィア……ただ、裕樹たちが知るそれとは明らかに違うそれを手に取った。
裕樹はそれを見て、自信の危機察知が最大限の警鐘をならしてる感覚を覚え、臨戦態勢に。
「これは人工物だよ……四凶たちのコアのデータをコピーした上で特殊加工した、僕専用のシン・スフィア……プログラム・シン コード卍。レベルハーフ、起動!!」
メキッ!
「ーー信じられん。ここ、エイジのはずだろ。なんで……」
「これが僕と四凶たちだけの、プログラム・シン コード卍だ」
裕樹は目を疑った。
電子召喚獣と人間が合体した事例は何度も見たことはあったが、太助の顎を含む上半身前半は、トウテツのボディそのものとなっており、右腕を含む上半身後半はキュウキそのものに。
しかも電子召喚獣ではなく、完全な生身として。
「気を付けてね。大抵の事なら1体で十分だけど、四凶2体との融合は九十九と剛が2人がかりでようやくだから……」
「……それでまだ上があるのか。けど、なんで今まで」
「ただでさえ自我が混濁した状態だから、これ使うと自我を保つのがしんどいんだよね……僕はまだ人間でいたいから、あまり使いたくないんだ」
「なら一旦手放せ。悪い夢からすぐに覚ましてやるさ……遠慮なくこい」
「ーー嬉し……いィィィィ」




