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傲慢 VS 憤怒 エピローグ

「地鯨王ネプチューンより、終了の知らせが届きました。火の人造神は、形状変化と共に自我と意思疎通、そして火の力の行使を可能にした模様。その際に人造神達が集い、雷の人造神が重傷を負った大神総副会長を選び、こじれはした物の契約は結ばれました」

 報告を手に生徒総会の席に着いた執行部長が、淡々と報告。

 ――その中で、目の下に隈を作り少々頬がこけてきた総会長が、漢方茶を啜り一息ついた後に会話を切り出した。

「結果は、予想以上――火の人造神の進化、雷の人造神の入手を含めれば、事実上は大成功。しかし人の創りし神は本当に人が、それも個人が持っていていい物か?」

「僕も、否と答えます……しかし理解し、受け入れ、悩まねばならない。電子召喚獣の基盤データを持っているとしたなら、あれは学園都市と言う全としてではなく、1人の個として以外に手に入れる術は皆無」

「今はその話は止めましょう。今確かなのは、朝霧裕樹、大神白夜共に疲弊しきった状態で戻ってくると言う事のみ」

「……ならせめて、理事会へ報告で少しは役に立たないと

「――それが終わったら一旦入院を。そろそろ過労死を心配する声も出てますし、生徒会が労働基準が崩しては意味がありませんよ」

「……わかった」




 電子召喚獣3体のオリジン、古代種の地鯨王ネプチューン。

 その背の上で、大火傷を負った白夜と、それに付き添う人造神パワー・オブ・サンダー。

 白夜から背を向け、人型に姿を変えたパワー・オブ・ファイアをじっと見つめる裕樹。


――思いっきり反吐が出るが、言ってやる。お前の思想は、敗北者に拒否権を認めないんだろ? だったら大神、お前に人造神を拒否する資格を、俺は勝者として認めない。


 その一言で、白夜は有無を言わないままに、雷の人造神を受け入れた。

 人造神に選ばれた事――それが無様に横たわる敗北者への施しと言う形になってしまった為、白夜にとっては受け入れがたいものだった為。

 今も敗北した自らへの怒りで意識をつなぎ留めている風で、雷の人造神に目を向けない。

「……これで残りは風、水、土――おそらく今後、この3体は積極的にマスターを見つけようと人間に干渉しようとする筈」

そうなれば……

「……」

 裕樹にとって、最強である事等、御影雄山の元で共に競い合ってきた結果で、肩を並べ合う絆の様な物だった。

 しかし、もうその最強の称号も、今や自分だけの物となり誰も居ない。

 信じてはいる……しかしずば抜けた天賦の才能の早すぎる開花故の過去から、裕樹は最強と言うその称号が自分だけの物になった事実を、認められなかった。

けれど諦め終わる事は、決してないと信じてはいる……しかし冷静な部分では、そんな物現実として存在しなければ、意味はないと断じている。

 理想を理想として終わらせるのではなく、現実に具現させる……それが、可能性を信じた者の使命であり、頂点に到達した者が最も理解すべき事柄

「――他人の諦観や挫折に失望どころか嫌悪したくせに、何やってんだよ俺は」

 ふぅーっと大きく息を吐きだして、脳裏にある事柄を思い浮かべる

 裕香が生まれた時の感情、そしてアサヒに手を差し伸べた時の事――いずれ離れなければならないその時まで、愛すべき妹たちを守り、たくさんの苦痛を経て自らが学んだ事を教えなければならない。

 ――なのに、何をしている?

 その自問の果て――大神に目を向けた。

「大神、不本意だけど今回は俺の勝ちだ……そして見定めた。俺は誰よりも先駆者として誰よりも強く、誰よりも先を駆け抜ける。それが人の創りし神を一番最初に手に入れた、俺の使命」

「――使命、ときたか。1人で前を向くことが出来ず、暴力の覇者に堕ちる事を恐れ、堕ちた悪魔の名の汚名と言う範疇で、足踏みを続けて来たお前が」

「本当はアサヒを拾ったその……いや、裕香が生まれた時に自覚すべき事だった。でももう足踏みって名目の臆病は終わりだ。甘かろうが間違えようが罵られようが、俺の2人の妹たちの為にも、証明してやる――優しさは世界ではなく、人の物なんだと。善は“いつか”ではなく“人の手”で成し遂げられて、初めて人の世に成り立つ物なんだと。裕香とアサヒにも、それを成し遂げられる成長が出来るように」

「……ようやく吠える事を覚えたようだが、やはり貴様は甘い。改めて、貴様とは住めないと悟った」

「――今からとどめ指してやってもいいんだぞ」

 と、岸に辿り着くその前まで、地鯨王ネプチューンの背の上で不毛な言い争いが続いた。

 それが一段落したのちに……

「……あーっ、裕香とアサヒに速く会いたい」

 自然と裕樹は、そう漏らしていた。


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