DIEシステムの人造神(2)
学園都市湾岸、メガフロートで造られた人工島
その上には、小さなログハウスがあるだけの殺風景な光景。
「中等部を卒業して以来だっけか……なんか、帰ってきたって感じ」
「ああっ、懐かしいな――ワシたちが学校が終わってすぐここに集まり、日夜修行に明け暮れた場所」
「ん、大神はどうした?」
「人造神に関する緊急会議だ。あれだけの騒ぎ、早々治まる訳もない」
「…………ここ、で……ユウ、お兄ちゃん、が?」
「うん、一度来た事あるけど、変わってないね」
昔話に花を咲かせる最強と呼ばれる4人と、裕香とアサヒ。
そして……
「ここが、裕樹たちの修業時代の思い出の場所か」
「この人工島、確か隠居の理事が住んでるって聞いた事ありますけど、まさか最強達を育てた修業場だったんですね」
興味があると言う事でついてきた、龍星と鷹久
女性陣は仕事や約束があると言う事で帰った為、殆ど男所帯。
ログハウスの呼び鈴を鳴らし――
「これはこれは、凪坊ちゃん……いえ、若様。ようこそいらっしゃいました」
「お久しぶりです相原さん、そして御爺様の世話役いつも感謝しています」
「そう言って頂けて何よりです」
笑顔が常、と言う様な執事服の男性が出迎え、中に招き入れた
ただ……
「……全然隙が無い」
「ええ……世話役じゃなくて警護なんじゃ」
龍星と鷹久は、出迎えた執事の立ち振る舞いに、驚きを隠せずにいた。
「四神たちは?」
「お嬢様方でしたら、既にお見舞いを済まされました」
「そうですか」
「――旦那様、若様たちでございます」
そうこうしている間に、ログハウスの海を臨めるテラスに通された。
医療機器と点滴に繋がれ、椅子に腰かける筋骨隆々の老人。
「久しぶりだな、先生」
「――ちっとだが、良い面になったな。ユウ坊」
「……なんで俺だけ変わらずんな呼び方なんだよ」
と、1人だけ子ども扱いに不満を唱える裕樹だが。あっさり無視された。
「凪、王牙、正輝……肩書だけの大物ぶったガキに成り下がっちゃいねえようで、何よりだ。それと……」
「お久しぶりです」
「おおっ、あの頃ユウ坊の後ろに隠れていたお嬢ちゃんか。もう1人は――」
「仕事の過程で拾った子だ。今は俺が引き取ってる」
「ほおうっ」
と言いながら、アサヒに目を向け……怖がって裕樹の足に震えながらしがみ付く姿を見て、一言。
「――成程、随分とデカく深く惨い傷を、つけられた様だな」
「昔あんたに言われた‟正しい腐敗よりはまだマシだが”って言葉の意味……今は少しわかった気がする」
「なに捻くれ坊主の分際で大人ぶってる」
「うるせーよ。大体〝これで人生最後の仕事は終わった、これからはテメエの足で歩け”って、送り出すより叩き出したクセに」
と、そこで龍星と鷹久に目を向ける。
2人はただそれだけで圧倒されかけたが、何とか持ちこたえた。
「--誰かの舎弟かなにかか?」
「俺が時々一緒に仕事する仲間だよ。先生に興味あるってんで連れて来た」
「……榊龍星です」
「--吉田鷹久です」
「御影雄山だ……良い眼だが、そこそこってトコか」
肉体的には、とても老人とは思えない筋肉、そして鷹の眼を思わせる鋭い眼光。
――とても一戦どころか一撃だって、等と言う事さえ出来ない。
医療機器と点滴が目に入ってはいても、そう思わされた
「御爺様、本日は」
「そうだったな――ユウ坊、人造神とやらに選ばれたんだと?」
「ああっ――パワー・オブ・ファイアだ」
そっと手を差し出し。その上に火が灯る様にしてレッサータイプの姿の、パワー・オブ・ファイアが顕現。
その姿をじっと見て、一言。
「成程……神、とはよく言ったもんだ」
「心当たりあんの?」
「いや――妻や同胞たちへの土産話に、一つ花を添えられると思ってな」
「何言ってんだよ、俺達まだ誰1人としてあんたを超えられてねえのに」
「だからまだユウ坊なんだ――教わった事とより強く培った物を、後世に伝えないのか? 自分で最後、とでも思ってるのか」
「僕達は席外しましょうか」
「そうだな。裕樹がガキ呼ばわりなんてそうそう見れる物じゃないが、部外者が聞く物じゃないか」
「アサヒちゃん、行こ」
「…………うん」




