DIEシステムの人造神(1)
学園都市の最高にして欠かせない基盤の1つ、電子召喚獣のメインサーバー
突如、その施設で起こった異変――その後処理が終わり、保安部警備システムサーバー室にて。
「……結論から言えば、この個体――“パワー・オブ・ファイア”は電子召喚獣ではありません。能力データの核である、火の属性データの集合体、人造神と呼ぶべき存在です」
「じゃああの異様な光景は、その属性データが具現した状態って事?」
「はい、あの時消えた4体も同様で、今はそれぞれ学園都市DIEシステム下における空気や電気、水や水蒸気、そして地面と同化……いえ、その物となっているでしょう。エネルギー総量と言う見解では、これ1体でも神の領域と言うべき代物です」
来島アキ直々に調査研究を行い、光一を訪ねてきた面々+正輝で説明を聞いていた。
そして……
「神の領域、ねえ……で、その人造神って呼ぶべき中でただ1体、こいつが俺を選んだ理由については?」
その渦中である現れた5体の内、裕樹を選んだだろう1体。
現在はレッサータイプの様な姿となって裕樹の手の上で、ふよふよと浮遊している。
「電子召喚獣の基幹データ、マスター登録の残滓が残っていました」
「残滓?」
「はい。基幹データは電子召喚獣の要として設計されています。それが能力データに影響を与えていても、おかしくありません」
「ふーん――だから人造神パワー・オブ・ファイアは俺を求めたって訳か?」
裕樹の手の上でふよふよと浮遊してる、パワー・オブ・ファイアと呼ばれた個体と眼を合わせる。
そう問いかけても、何の反応も見せない。
「ですが、それらは所詮は残滓。純粋な力の集合体であり、本来持つべきコアを持たない存在である以上、自我はありませんし特定の身体を持ってはいません」
「――待てよ、コアがないって?」
「ええ、これには私も驚きました。パワー・オブ・ファイアには存在の要と呼べるコアが、本当に存在しないのです……ですから正確には、人為的に創られた存在ではありません」
全員の眼が、パワー・オブ・ファイアに向けられた。
今はレッサータイプの姿を取っていても、あの時の巨人の姿が全員の脳裏に……
「…………ふぁあっ……眠い」
――訂正、アサヒ以外の脳裏に浮かんだ。
我関せずを体現するように、アサヒが裕樹の膝に捕まって抱っこをせがむ。
「…………抱っこ」
「あっ、ああっ……」
「……アサヒちゃん、全然動じてないね」
「…………? ユウ、お兄ちゃんの……でしょ? ……なん、で?」
そう言って、裕樹に抱っこしてもらうと肩に顔を埋めて、スースーと寝息を立て始めえた。
その姿を見ながら、やれやれと言う風に……
「まあ、それもそうだな。残りの人造神たちの事は気になるが、今はその1体が朝霧の手にある事は幸いだと考えるか」
「なら、これ以上の説明は無駄と言う事で――無駄と言えば、他の人造神たちは先ほども言いましたが、完全に学園都市内の空気、電気、水分、土壌と同化してしまっているので、調査は不可能です……もし姿を現すとしたら」
――マスターと認めるべき存在を見出したその時、か。
と言う正輝の問いかけに、アキが頷いて肯定を示した
「では、時間を取って済まなかった。これにて解散――それと朝霧」
「ん?」
「先生が会いたいとの事だ。一緒に来てくれ」
その場がどよっと騒めいた。
「ん? どうかした?」
「裕樹、正輝、お前らに師匠なんていたのか!?」
「いやいやダンナ、俺達だって独学だけで、ここまで来た訳じゃないよ。俺達4人と大神とで、実は凪の曽祖父に当たる人に師事してた事がある」
「……あの、今“曽祖父”って言いました?」
「ああ、言ったよひばり。確か井上理事長のおむつ変えてたとかなんとか話してたから、生まれは大正だったっけ?」
「まずは朝霧、女性1人2分で良いから紳士になれ……そう言えば、正確な年齢はいつもはぐらかされ、教えて貰えなかったな。まああの方なら、明治処か幕末も体験していそうだが」
と言う会話に……
「……うそでしょ」
「……一体どんな高齢の方なんれしょう?」
「……全然想像できないよ」
ひばり、みなも、つぐみは会話の内容にぽかんとしていた。
光一に龍星も、最強が師事していた人物であり、凪の血縁者と言う事に興味を持つ
「凪の家って、確かかなりの名家だと言う話だったな」
「正確には分家で、本家筋の名代兼護衛の武術一族なんだとか。確か本家筋当主が今理事会に居て、その名代らしい」
「へえっ、凪が名代を務めるって事は、かなり立派な方なんだろうな。誰なんだ?」
「いや、そこまでは俺も知らない」
と言う話をしつつ、その場は解散となった。
「ねえユウ兄ちゃん、あのおじいちゃん(?)に会いに行くの?」
「ん? ああ、そうだけど、一緒に来る?」
「うん、久しぶりにお料理作ってあげたいし」
「なあ北郷、先生今どうなって……んな訳ないか」
「ああ、想像も出来ん」
2人はうんうんと頷いてる中……
「ねえ裕香ちゃん、その人と知り合いなの?」
「うん、学園都市に来たばかりの頃に、顔を合わせたいとかなんとかって」
「どんな人れしゅ?」
「うーん……良く分からないけど、すっごい人だった」
「それだけなの?」
「うん、それだけ」




