学園都市のすごろく大会(1)
「委員会で、新しい企画部門の設立が検討されてんだ」
「新しい?」
「そっ。スポーツにライブ、ショーにコンテストと、学園都市の様々な興行、お祭りを手掛けてきたあたし達は、新たな未知なる遭遇が必要な時期に来た訳だ。そこで目をつけたのが――」
ジャーン! とでも言わんばかりに、綾香が手を広げる。
そしてもったいつけるかのように、背にドンと置かれた物に掛けられた垂れ幕をゆっくりと取り払う。
「スパコン? ――てか、よく買う金あったな?」
「そう、これはVR専用スパコン何だけど、これを使っての新しい興行が提案されたんだ。流石に買うまでは出来ないから、これは協力者からの提供だよ」
「成程、VR系の興行なんて今までなかったから、良い案じゃないか。協力者は?」
「VR系ゲーム方面の学科がな。流石にスパコン購入する様な予算ないし、企画は出来てもそれを実装は出来ないからさ――で、皆に来て貰ったのは、その新しい企画のモニターやって貰いたいんだ」
「その規格の内容は?」
「すごろく」
会話をしていた光一を始めとして、呼ばれた面々全員が居る場の空気が凍った。
「VRなんてハイテク使って、やる事はすごろくかよ!?」
「まずは試しにだよ。みんなで楽しめて、尚且つ誰にでも出来る物としての物じゃなきゃダメだから、慣れが必要な今出てるVRゲームは全部アウトなんだよ。と言う訳で」
そこで話を切って、1つの箱と紙の束を取り出し、差しだした。
「今からルールの説明と、チーム分け」
そう言って綾香は光一にルールを書いた紙を手渡し、光一は眼でそれを読み進めて行く。
・参加者は3人1組、サイコロの目は1~6
電子召喚獣の使用もあり(ただし、すごろくのルールに違反した場合、即失格とする)
・マス目には必ず命令があり、そのマス目に止まった場合はその命令を実行しなければならない。
命令自体は無理がない様に考慮された物となっているが、出来ない場合は1回休み
・命令の達成は、参加者あるいはその所有する電子召喚獣のどれか1回でもクリアできればよしとする。
ただし、前提条件のある命令である場合は、それを満たしていない場合は免除とする(例として、男性専用の命令のマス目に、女子しかいないチームが止まった場合等)
「命令って、すごろくって言うより人生ゲームだろこれ?」
「VR使ってんのにそのまんまのすごろくじゃ、企画する意味がない上につまんねーだろ。勿論あたしとあたしの部下たちで考えた、爆笑必須の当たり目はあるから、楽しみにしとけよな♪ ――さて、何か質問あるか?」
その後、ルールに関しての質問を綾香が答え、そののちのチーム分けのくじ引きが惹かれて、3人1組のチームが結成
・朝霧裕樹、一条宇佐美、水鏡怜奈
・久遠光一、朝倉歩美、クリスティーナ・ウェストロード
・黛蓮華、涼宮みなも、榊龍星
・高峰光、支倉ひばり、雨宮つぐみ
・夏目綾香、吉田鷹久、中原大輔
「――ってちょっと待て、なんで水鏡のお嬢さんと黛が!? それに、光に大輔も」
「タカが蓮華と浮気してたんで、引っ張ってきた。光と大輔は、今日は非番なの思いだして、詠んだんだよ」
「浮気って……」
「鷹久、女にだらしないのは流石に――」
綾香の冗談だとは分かっていたが、光も大輔もじと目で鷹久を見つめる。
「してないしてない! ちょっと仕事の事で話してただけで、そう言うのじゃないから!」
「そっ、そうです! 大体浮気などと、私にはそもそもが――!?」
「……あっ、あははっ」
綾香のノリについて行けない怜奈が、慌てる鷹久と蓮華を見て苦笑していた。
「よろしくお願いします、水鏡先輩」
「――こちらこそ、よろしくお願いします。一条さん」
「宇佐美で良いですよ」
「では宇佐美さん、よろしくお願いします」
そんな怜奈に駆け寄り、笑顔であいさつする宇佐美に、ほっとしたように怜奈が笑みを浮かべて挨拶するのを見て、裕樹がはあっと息を吐きだす。
「……こういう場にいざこざ持ち込むのもなんだし、今回は水に流そう。よろしく」
「――こちらこそ、よろしくお願いします」
朝霧チーム、結成完了
「くじびきする必要、あんま感じなかったな」
「そだねい。でもまあ細かい事はいいっこなしだよん」
「なんだか、ドキドキしてきました」
「今日は、よろしくお願いします。榊さん、涼宮さん」
「よっ、よろしくおねぎゃい、しましゅ!」
「よろしくな、みなもちゃんに蓮華ちゃん」
「……榊さん、ちゃん付けはやめて下さい。怜奈様以外にそう呼ばれるのは」
「そうか? ――わかった、蓮華」
「よろしくね、支倉さん、雨宮さん」
「ひばりで良いよ、光ちゃん」
「私も、つぐみで良いからね」
「おっ、早速和気あいあいだな。ちびっこチームは(裕樹)」
「「「ちっちゃくないよ!!」」」
「全く、綾香はもう!」
「悪い悪い。でも疑われる雰囲気だったのは事実だろ」
「……気をつけるよ」
「……居心地悪い」
こうして、すごろくのチームは結成された。




