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屋台通りで花火を楽しもう

 本日は、屋台通りでの親交花火大会。

 皆で花火を持ち寄り、通りの交差点に当たる箇所で思い思いに花火を。

 チャッカマン、ロウソクをはじめ、花火を捨てる為の水入りバケツ等も持ち寄って、皆それぞれ思い思いに花火を満喫中。

 ――で。

「宇佐美は線香花火?」

「うん、線香花火ってなんか好きだから」

「まあ確かに、これはこれで綺麗だとは思うけどね。小さいなりの、精一杯の輝きと言うか」

「――裕樹は“本当に”時々ロマンチストなセリフが、恥ずかしげもなく吐けるの凄いな」

『そうだね。“本当に”時々良い事を言うよね』

「……ダンナに芹香、なんで2人して“本当に”を強調する?」

 なんて4人で線香花火を見てる中で、ポトリと落ちた。

「あーあ、結構大きかったのに」

「やっぱデカいと、タレるも速いんだなー」


 バチーーンッ!!


『……宇佐美ちゃん、今のは違うと思う』

「そう――ですよね。今気づきましたけど」


「――なんだったんだ?」

「――ちょっとした事故と思っとけ。俺もどう言って良いかわからんし、下手なことすると俺まで怒られそうだ」

「よーわからんけど……腹減ったな。食いたくなった」

「おっ、良いな。2人の分も買って来よう」

 と、顔にくっきりとビンタ跡をつけた裕樹は、龍星を伴ってその場を後に。

「所で裕樹、妹二人はどうした?」

「2人とも、つぐみとみなもの屋台でお手伝い、だってさ」

「慣れたのか?」

「いいや――雑用を含めた手伝いの範疇の仕事をすぐ覚えて、自分でもうあれこれしてるらしい」

 アサヒは店員の殆どがビックリする程仕事を早く覚えて、人とのやり取りが嫌だからなのか、言う前には全てを完璧に終わらせている。

 表情は動かさないし、近づくのも細心の注意を払わねばならないが、アサヒはアサヒで気を使わせるよりもさっさと仕事を覚え終わらせ、外で1人でボーっとしている時間の方が長い位。

 ボーっとしてる間の眼は虚ろで、とても風景や屋台通りのやり取りを見ているとは思えない、と言うのが屋台の人たちの感想。

 ただ、裕香に対しては最低限のやり取りだけはしているが、あまり会話にはなってない。

「まだ月の診断中だから、アスペルガーとかはまだ判断出来ないらしいけど、IQテストは平均値超してるから、頭自体はいいってさ。問題はむしろ、後天的な感情欠如と対人恐怖症、それと俺に対する依存症なんだと」

「やっぱりまだ通院してるのか?」

「そりゃね――精神的な破綻って、後々まで大きく響くもんだからさ」

 そこで打ち上げ花火が撃ちあがり、軽くパーンと音を鳴らして上空に綺麗に輝いた。

「あの花火みたいに、響いたら後は散るだけってだけじゃ済まないんだよ」

「なんか実感なくないか?」

「そりゃそうさ。“強くなりたい、その願いと言う前を向き続けろ”、って当時尊敬してた剣道の先生が、俺が獲ってきた賞状やトロフィーを眺めて、“全く天才様様だな、やっぱり凡人より天才だ”っつって笑ってたのを見た時、思いっきり頭に血が上り過ぎて逆に冷め切ったから――やめるっつった時の発狂顔と悲鳴、今でも反吐が出る」

「……お前思ったよりキツイ経歴持ってんだな」

「それだけで済めば良かったんだけどね。練習でも出稽古でも、弱い者いじめしてる感覚しかなかったし、天才に凡人の気持ちはわからないっつって、突っぱねられて――方向性は全然違うけど、アサヒが精神的に人を嫌うのは理解できる」

 ――信じられないだろ?

俺の今の考えって、もう初等部には基盤組み上がってたんだって。

「時々何を考えてるのかよくわからん奴だったが、アサヒちゃんが裕樹に惹かれてる理由だけは良く分かった」

「――傷の痛みまではわかってやれてないよ。こんな傷つけて何が面白いのか、こんなことする意味がこの学園都市にあって良い訳ないっつー、ただの嫌悪と自己満足だけだし」

「そういう面で自己評価が低いのはどうかと思うがな」

「善は育む物であり責任であって、掲げたりおっぴろげにするもんじゃねーだろ――まあこれも、初等部の時に悟った事だけど」

 ――どんだけ大人な初等部なんだ。

 と思いつつ、事実上で年上なのだから、こういう時はびしっと大人らしくアドバイスを――と思う龍星だが。

「あっ、ユウ兄ちゃん」

 と、裕香の声が聞こえ、それを聞いたアサヒが一直線に裕樹に駆け出し、足に抱き着いた。

 余談だがアサヒの服は、ドクロと剣のプリントが入ったTシャツに、裕樹が好んで履いてる丈夫で軽い素材で出来た長ズボンと靴で、女の子……増してや、無表情で無気力なアサヒが着る様な恰好じゃなかった。

「――前から思ってたんだが、なんでこの格好なんだ?」

「俺も、裕香が勧める服を着て欲しいんだけど、俺と同じ服が良いって――みなも、クレープくれない? 俺はビ……イチゴとバナナの。アサヒと裕香は――」

「「同じもので」」

「はーい――裕樹先輩、いつもの特注ビゲストサイズが頼みにくくなりましたね」

 みなもが笑いながら、裕樹を始めとした大食い専用メニュー、ビゲストサイズ。

 クレープ数枚を特注の包装で1つにまとめ、あらゆる具を詰め込んだ特注品で――

「そう言えばみなも以前、こんなの食べたら間違いなく体重がどうとかって――」

「……女性に、特にアサヒちゃんの前でそう言う禁句を言うの、やめてください」

「よーわからんけど、わかった。あと宇佐美と芹香の分も頼む」

「それは俺が持とう。裕樹はアサヒちゃんを抱っこしててやれ」

「ん、わかった」

「あっ、私とつぐみちゃんももうすぐ交代だから、そっち行きますね」

「おうっ」


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