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六道の剣VS明王の拳

 保安部庁舎。

「ちょっとは反省しろ!」

 その怒声が響き、龍星は数名の初等部とそれを煽っていた寮監を、保安部に引き渡す。

「あっ、龍星さん。そちらもですか?」

「おおっ、鷹久。そちらも……と言う事は、お前もか」

「はい……気分悪いですね。幸い、僕達が居た初等部寮からはそう言うのなかったけど、綾香は警戒してますし」

「――全くだ、内容が内容だけに……」

 そこで言葉を止め、龍星と鷹久――そして、周囲にいた保安部機動部隊員が、肌にびりびりと来るような感覚を覚えた。

「――今のって」

「あっちからか!? 行ってみよう!」

 駆け付けた先では、裕樹が電子ツールの打刀を突き出し、それを正輝が白刃取りで受け止めた体制。

 そのぶつかり合いで耐えられなかった刀身が、裕樹の手に半分、正輝の手に半分となっていて、二人は背中合わせの状態。

 2人は振り向きざまに、裕樹の顔面に拳が、正輝の胴に蹴りがめり込み、裕樹が吹っ飛ばされ背中から倒れ込み、くるんと後転して体制を立て直す。

 正輝も裕樹の蹴りを胴体に叩き込まれ、追撃とまではいかず蹴られた箇所を抑えつつ裕樹に注意を向ける。

 流石に痛み分け、と言う訳にはいかず裕樹は多少脳震盪気味に、意識が少し乱れていた。

「――なんだ? なんで裕樹と正輝が」

「しかも2人して雰囲気が本気って……どうしたんでしょう?」

「わからんが……見てみるか」

 それからも保安部機動部隊員をはじめ、武道の心得がある面々が集まり始める。

「かーっ……頭にガンガン響く――んだよ、鈍ってねえじゃねえか」

「いや、今の手応えで多少の乱れ程度なら、鈍っている範疇だ」

「言ってくれるねえ――いや、そうでなきゃなあ」

 裕樹は余裕を崩さず、寧ろ喜んでいるように口元に笑みを浮かべた。

 その余裕を崩さない裕樹に、正輝も血の滾りを覚えていた。

「ならば――アイゼン!」

『ガオオオオオッ!!』

 正輝の電子召喚獣の1体、獅子型電子召喚獣アイゼン。

 その体からオーラの様な物を醸し出し、正輝を包み――顔に蒼い隈取、寮の拳は蒼色に染まり、ガチンと寮の拳を打ち合わせる。

 アイゼンの能力は、身体強化――正確には、正輝の身体に隈取模様の電子ツールの鎧をまとわせる能力。

「――六道輪廻」

 裕樹が打刀を消し、腰に差している6本の太刀。

 その内の、左の腰に差している3本の太刀を、ゆっくりと引き抜く。

「我が魂、天道、人間道、修羅道、是“三善諏”の三界を彷徨する」

 電子ツールには、数が作りやすい量産型と、ツールスキルと言うシステムが搭載されたクラスツールが存在する。

 スキルは過去の電子召喚獣の能力を基にした物、あるいは独自に組んだプログラムがあり、裕樹の六本の太刀はツールスキルを持ったクラスツール。

「――“修羅道”」

 そう言って、裕樹はまず1本――刀の刀身がぼやけたような刀を手に取った。

 くるりと回し、地面に突き立て――。

「――“修羅”武流道」

 其処を起点に、電子ツールの槍、剣、銃、そして拳や特異な形状の武器が、波のように正輝に襲い掛かった。

 正輝は微動だにせず、はーーーーっと息を吐きだし……

「すぅぅぅぅぅぅううううううううう」

 その流れる武器を1つ1つ破壊し、しのぎ切った。

「修羅道は打ち合った武器、戦法を記憶しそれを形にする――また増えたんじゃないか?」

「それでもしのがれるってのもなあ……まあいいや。“人間道”」

 次に出したのは、斧のような刃をもつ包丁みたいな刀身の刀。

「我、人間道、修羅道の境界を彷徨いし魂。故、我が魂は人修羅となろう」


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