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闇夜の明けを示す朝日のように

久しぶりに、ひばりと裕樹のカップリングかきました

そういや、このカップリングかくのも久しぶりだなーと思いました

 宴会が終わってから少し経ち――。

 月とひばりの協力のおかげで、痩せ細った身体はある程度血色が回復した身体に。

 裕香も、甘えるのも甘えられるのも大好きな為、アサヒが戸惑わない程度に優しく……

「アサヒちゃん大好き♪」

 と、目いっぱいの愛情を注いであげ、アサヒは徐々に裕香にも心を開いていった。

 裕樹も、仕事が終わってケーキを買って帰って、団欒の時間を大事にするようにし――。

「なあ、アサヒ。楽しいか?」

「…………」(コクッ)

「そっか」

 そして夜は裕香とアサヒで一緒の部屋を使ってたんだが、夜の間に裕香とアサヒが裕樹の布団に潜り込んで、抱き着いて眠ってる。

 裕樹はそれに気づいていたが、アサヒが体を丸めてガタガタと震えるのを見て、そっと手を添えて抱えてあげた。

 ただ――

「こんにちは、アサヒちゃん」

「よう、アサヒちゃん」

 どうしても、宴会場で顔合わせはしたにはした物の、対人恐怖症が治らず怖がっている。

 体格がいい龍星だけでなく、みなもやつぐみと言った優しそうな子でさえ、アサヒは怖がっていて馴染めなかった。

「すまん」

「ケガは治っても、心の傷までは――と言う感じか」

「事情を聴く限りじゃ、時間かけて馴染むしかないよね」

「でしゅね」

 理解してはもらっているが、徐々に裕樹は不安に駆られ始めていた。

 最強だなんだ言われても、まだ成人もしてないガキに過ぎない俺が子供を引き取るなんて、やっぱり無理だったんじゃないかと。

「おい裕樹」

「ん?」

「大丈夫か? お前、最近どうも悪い意味で変わって見えるぞ」

「大丈夫だって――大丈夫」

「無理するなよ裕樹。お前の手助けなんて出来る身分じゃないが、年上らしく相談の1つや2つはやってやれるぞ」

「……気持ちだけもらっとくよ」



 そんなある日、ひばりに裕香とアサヒを預けなければならない仕事が、裕樹に。

 フリーの身である物の、調査に身辺警護、そして陽炎財閥や生徒総会の敵対者の鎮圧あるいは拿捕等、俗にいう危険な仕事を生業としている。

 保安部崩れの経歴を差した“堕ちた悪魔”と言う蔑称を着けられていて、まともな仕事が出来ない身の上ではあるが 実力は学園都市の武闘派系でも最強に名を連ねる1人で、仕事に感情を差し挟まない為、実力と共に仕事は2つのお得意様から信頼されていて、危険手当込みで相当な額を支払われる事が多い。

 最初こそ断るつもりだったが、ひばりや龍星とも相談し、龍星が裕樹の補佐を名乗り出て、ひばりも預かる事を了承。

 アサヒはと言うと、少しの間帰れないと聞いた時は涙目になったが、そう言う生業の経緯が自分を救い出してくれた事を理解していたので、否定できず送り出した。

「出来たよ、ひばり姉ちゃん」

「うん、おいしくできたね」

 そんな中で、ひばりと裕香は2人で料理を楽しんでいて――

「……」

「ねえ、アサヒちゃん」

「……! ……はい」

 アサヒはまだひばりに馴染めず、距離を取っていた。

 裕樹と会ってからの環境の変化は、いきなり別世界に飛ばされたような感覚であり、幾ら裕樹の知人であり、裕香が好きだと言う相手とはいえ、未だに対人恐怖症は残っていた。

 ひばりも無理に距離を詰めようとせず、少しずつ歩み寄る努力を続けているが、成果なし。



 ――そして。

「やっと終わった」

「あっ、裕樹さん」

 少し疲れた雰囲気の裕樹が、2人を迎えにひばりの部屋を訪ねて――

「! ……」

 一直線に、裕樹に飛びついてきた。

「……? どうした」

「まだ、裕樹さんと裕香ちゃん以外に心を開けないみたいで」

「……まだダメか」

 ひょいっとアサヒを抱き上げ、ポンポンと背中を軽くたたき、あやし始めた。

 それから、アサヒが寝てしまい、ひばりに話があると言う事で、裕香に寝てしまったアサヒを任せ――

「――やっぱ今回の仕事、断るべきだったかな」

「何言ってるんですか。ちゃんと事前に相談して決めた事だし、アサヒちゃんだって裕樹さんの生業のおかげで助けて貰ったから、反対しなかった……いえ、今思えば出来なかったんですよ。あたしも……怖がられるなんて初めての経験だから、どうすれば良いかわからなかったですけど」

「……難しいな、ホント」

ひばりは、裕樹も幼少は周囲から距離を置かれてた事は知っていたし、裕樹もひばりが昔いじめられっ子だった事や、様々な事が折り重なってトラウマがある事を知っている。

ただ両者には、恐れられる側故と恐れる側と言う決定的な違いがあり、裕樹にとっていじめが存在する事や他人を妬む気持ちは決して理解は出来なかった。。

 ただその一方で、裕香に大泣きされたからと言う理由で、失明してる訳でもないのに左目に眼帯を着けてたり、アサヒを引き取った事に対しても、偉く気を張ってる様な雰囲気を、ひばりは裕樹に感じていた

「……裕樹さんって何というか、善い事をする事に、負い目みたいな物を感じてません?」

「え? ――うーん……そう、なのかな?」

「だって前々から‟堕ちた悪魔”って蔑称を、気にしてないって言ってる割に、それを自分の本性の様にとらえてる節がありましたから」

「――それは宇宙にも言われたけど、やっぱそう見られるのかな?」

 ひばりは光のない眼で、裕樹を見つめていた。

 話を聞く限りでは、アサヒを見つけたのが自分だったとしても、間違いなく執行部の権力に捻じ伏せられ、どうする事も出来なかった。

 なのにそれが出来た裕樹が、何故“堕ちた悪魔”と言う蔑称を認めてるのか。

「――えて……さいよ」

「え?」

「――あたしにはどう考えたって、裕樹さんしかアサヒちゃんを助ける事は、出来なかったんですよ。なのにどうして、貴方はそんな蔑称を受け入れてるんですか!?」

「ひばり……」

「--貴方が“堕ちた悪魔”だったら、あたしは一体何なんですか!?」

 気づいたらひばりは、泣いていた

 裕樹はひばりの涙を拭いてやり、俯いて一言。

「わかんねえよ。俺は善悪で物事を図れないし、図っちゃいけないんだ……だから、ひばりの言う良い子でいる意味も苦しみも、アサヒの痛みも俺にはわからんねえ」

「……わからないなら、どうして助けたんですか?」

「――全くの対極だけど、勝手に絶対的な烙印を押されて、周囲から全くの別物として扱われ続けた虚無感だけが理解できた――その義務みてえなもんさ」

 だけど――そう言って、ひばりの頭にポンと手を置いた。

「裕香が生まれて、初めて抱いた時――あの時の感覚は、どう表現すればいいのかはわからない。それを同じ物を、アサヒにも齎したいって気持ちもある……ひばりにもな」

「え……?」

「ひばりの母さんがどんな人かは知らないし、最後に何を思ってひばりにそう言い残したのかはわからない。けどアサヒを引き取ってからは、ひばりの母さんはひばりに何かを遺したい……そういう気持ちはあったんじゃないかって思う」

 無責任な言い分だけどな、と言って裕樹は言葉を切った。

「――本当に、無責任ですね」

「気持ちを押し付けてるだけって自覚はあるからな」

 その日はそこまでにして、裕樹は2人を伴ってその場を後にした。



 ――後日

「へえっ、そんな事があったんだ」

「……月さん、裕樹さんが“堕ちた悪魔”なら、あたしは一体何なんなのかな?」

「そんなの比較するだけ無駄じゃない。ひばりはユウじゃないし、ひばりなりの“良い子”を見つければ、それが答えなんじゃない? それに……」

「?」

「ユウが出来ない事をひばりがやれば良い。そうやって、考え方を育む術はあると思う」

「……一緒に」

「まずは悩んで、かな? でもその気になったら、幾らでも相談に乗ってあげるわ。まあユウって、恋愛事だとてんでバカだし、フェロモンや媚薬が効かない体質だから、苦労するだろうけど」

「――待ってください。後半なんかすごい事言いませんでした?」

「じゃ、がんばってねひばり」



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