学園都市の闇と、四神の使命
久しぶりに書いてみました
もちッと楽しい短編書きたかったのですがそこは勘弁を
篝火に火を灯し、祭壇に供物を捧げよ。
篝火に灯され、供物は骨を形作り、その上から肉で覆いかぶせ、血液を流し込み、皮膚を張り付ける――DIEシステムによる構築プログラムは、正常に働いている。
我等はとうとう、神を創造する術を会得した――我らが教主が、試練の果てに手にした知啓をもって。
神に祈りを、教主様に敬意を、そして世界の未来を我らが神の意向により齎される
――人間の浅はかな歴史に、幕を下ろせ。
――天に神、地に人という、かつての絶対的な理を取り戻すのだ。
ガシャーン!!
「とうとう見つけた……初めまして、妄想に思いあがったバカ野郎ども」
「貴様は……!? ――やはり来たか。そんなに我らが教主が邪魔だと言うのか?」
「ああそうさ――悪いけど君達のその儀式と教主様の記憶、消させてもらうよ」
「神を超えた存在にでもなったつもりか? “境界樹”の知啓の独占を狙う、独裁者め」
「何とでも言え――それが教主様のやり方だと言うなら、これが僕のやり方だ。お互い人の道理が通じない存在同士なんだから、僕からはそうとしか言えないよ」
「――東城太助を捉えよ、我等が神と教主様の供物とするのだ!!」
「――九十九、剛、そして四凶たち……僕が許す。全部、全員を破壊しろ」
学園都市において、お祭りやパレードが重要視されていても、それらに宗教観点が組み込まれたことは一切ない。
占いやおまじないと言った物こそ、一時期の流行として扱われる事はあっても、宗教観点を持ち込むことは禁止されている。
その理由として――
「で、ここがその現場か?」
「ええ。ここで、何らかの儀式が行われていたのは確かなようです」
“高度に進化した科学は、魔法と見分けがつかない”
DIEシステムはそれを体現したシステム、と言っても過言ではなく、このシステムで人造の悪魔や神を創り出そうとする試みは、いくつか行われている。
それらは総じて結果として失敗し、良くて何も起こらず、悪くて魔獣や凶獣と言った大災害を引き起こす事となっている。
生徒会から調査依頼を受けた裕樹と、四神の1人である辰美が見渡す、儀式が行われていたらしい場所――そこは見渡す限り争った……もとい、一方的な虐殺劇が行われただろう光景。
この儀式の参加者はほぼ全員が大怪我、あるいは強烈なショックを起こした重傷者ばかりだった為、既に病院に搬送されている
「――やったのは東城達で間違いないか」
「それは間違いないですね。信者たちは握りつぶされた痕、それと妖刀“王鮫”で切り裂かれた様相だったし」
「そして、この儀式の祭壇と思わしき場所は……」
其処だけ不自然に無事だった祭壇に近寄り、裕樹はその上の供物を見て嫌な顔をする。
まずは人間の物ではない事だけは確かな、様々な形状をした骨や肉、そしていい加減に集めた感が漂う臓物と皮。
そして……
「血だけは多分、人間のもんだろうな。信者全員の手の切り傷痕って報告あったろ?」
「つまり、そう言う事だったんですね――しかし、何故ここだけ無事だったのかな?」
「供物に用はないって所だろ――この様子じゃ、情報を掴んで乗り込んだ時には、儀式の真っ最中だったから、真正面から……だろうな」
「――横の篝火が滅茶苦茶なのは、これがシステムの一部だったから、かな?」
――所変わって。
「これが、教主様か?」
「でしょうね」
儀式が行われていた場の地下。
その奥の、天幕が張られていた場所――そこには、椅子が一つ。
そして、虚ろな目に手足は血液や栄養剤と言った点滴チューブ、身体や頭には生命維持関係の機器が繋がれた一人の少年。
頭部はいくつものコードが繋がったヘルメットがつけられていて、そのコードは隠されていたスパコンに繋げられていて、その脳から送られた情報の解析作業を行っていただろうが、そのスパコンだけがぐちゃぐちゃに壊されていた。
生命維持の機器以外のデータベースも、物理的にも情報的にも完璧に破壊されており、情報のサルベージは不可能になっている。
「――境界樹に触れてしまった者か」
「間違い、ありませんね」
“境界樹”
学園都市の都市伝説の1つであるが、四神の家系と凪の御影の家は、その境界樹の機密を守る事も使命の1つである
境界樹がどんなもので、一体どこにあるのか――それは凪たちもわからないが、触れた者は未知なる知識を手に入れる代わりに、大概が脳の容量が追い付かずパンク状態の廃人になってしまう。
その境界樹の知識を得られる人間を創ろうという試みも行われたが、結果として来島アキの様な感情の欠落と、無菌室での軟禁生活を余儀なくされる悲惨な結果に終わっている。
無事、とまではいかないが、その知識を手に入れた者はDIEシステムの開発者と、東城太助のみである。
それ以外では、来島アキを始めとする、人為的に何らかの手を加えられ、その受け皿を手に入れた者と定義されている。
「おーい凪!」
「――朝霧か」
「そっちはどうだ?」
凪は即座に武瑠に目配せをし、武瑠も頷いた。
裕樹の横で、辰美も事情を察知し、目を伏せる。
「その子は?
「――儀式には、この子の脳と人格を使う予定だったらしい」
「――容体は?」
「ダメだ、廃人になってしまっている。理事会に連絡して、施設に入れなければ」
「そうか……よく見れば裕香位じゃないか」
――所変わって
「良かったのか? 教主様とやらを置いてきて」
「良いさ。僕はお人形遊びに興味はない――まあ拾い上げた知識であそこまで、は流石に驚いたけど」
「けどよ東城センセー、それでも知識のサルベージは出来るんだろ」
「気にしなくていい。僕だって運用できる知識はまだ一握りだけで、まだ全く訳の分からない知識と呼べるかさえ定義も出来ない物の方が、圧倒的に多いんだから。活かせる様な人間、そうそう居はしないんだよ」
「ふーん――来島アキも、その類か?」
「そうだよ――ただ彼女は、人為的に感情と受け皿を入れ替えられた様な物だから、悪用なんて考える頭もってないのさ」




