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学園都市の体育祭 タッグバージョン(9)


 裕樹と怜奈のタッグ結成認定から2日後。

 最初こそ、この手の話題に付き物の尾鰭と言うゴシップが飛び交った物の、あくまでそれは一般の範疇。

 そのタッグ戦の参加者には、最も脅威と言えるタッグの誕生に脅威と奮起を齎した

 そして……

「怯むな!! 躊躇こそが防御の綻びだと思え、自身を疑うな!!」

「はい!!」

 本来は本命筆頭だったはずの、保安部長官であり最強の一角、北郷正輝

 そして、秩序側の勢力で最も最強に近い実力者、機動第一部隊長、中原大輔。

 正輝は拳だけを一心不乱に鍛え上げ、最強の矛であり盾となる一撃必殺に昇華した。

 逆に大輔は、パワー、スピード、テクニック、頭脳--あらゆる物を防ぎ、受け流す防御力で、最強に最も近いと言われる実力者になった。

 そのタッグの最有力説の消失へのショックはなく、より強力なタッグ結成に対する喜びから、2人の鍛錬は日々苛烈さを増していた。



 --所変わって。

「おおおおおおおおッ!!」

「ぬぅっ……はああっ!!」

 そして、結果的に一番最後にタッグ結成表明した、鳴神王牙と榊龍星のタッグ

 参加者中でも屈指の巨体タッグともあり、練習は傍から見ればかなりの迫力だと言われている

「ぬっ、ぐぐうっ……!!」

「やはりいいものだ--筋肉のぶつかりあいというのは!!」

 現在王牙と龍星は、ロックアップの形でせめぎ合っている--と言うより、龍星が押されていた。

 体格、筋肉の質量と密度--龍星が自信を持つそれも、王牙のそれには劣ってしまう。

 バーサクモードなら--とも思ったが、どの道王牙のスピードに対抗が出来ない為、やはり通常のぶつかり合いでしか戦いにならない。

 そして……

「ぬんっ!!」

「うおっ!!」

 龍星の頭が引き寄せられ、そこから王牙が膝蹴りの連打。

 ロックアップの腕を解き、膝蹴りをガードしながら王牙にタックル。

「--遅い!!」

 --される前に、解かれたロックアップの腕で龍星の肩を掴み、押し込んで逆にタックルで倒す。

 そこから寝技を極める動作は、非常に軽やかで龍星も対応以前に何も出来ず極められてしまう。

「--参った」

 王牙は豪快さの中に、柔軟さと軽やかさと精密さも併せ持っている。

 これは、実際相対した物にしかわからない、最強の肉体が持つ特性ともいえる。 

「色々と勉強になるな--俺の上位互換に色々とプラスされた相手と言うのは」

「そういって貰えて何よりです。しかし、何故バーサクモードを使わないのですか?」

「--生憎反応は出来ても、身体が王牙のスピードに対応が出来ん」

「そうでしょうね、榊さんの動きはどうも硬い。筋肉の質量と密度は本物ですが、それが身体の動きに馴染んではないと言う印象が」

「……筋肉が、身体の動きに馴染んでない、か」

「何でしたら、ワシがやっているトレーニングメニュー、やってみますか? 護送警備隊員は誰もついてこれませんでしたが」

「--よし、やろう。難易度の高さが証明されているんなら、成し遂げれば俺は今よりも強くなっていそうだ」



 --所変わって

「……」

『……』

『……』

「……」

『……』

 凪と辰美のペアは、それぞれの電子召喚獣と向き合ってじっと互いを見つめている。

 2人の態勢は座禅を組んでいて、その手にはシン・スフィアが鎮座している。

 その輝きは、凪の物が常に強い輝きを放っていて、辰巳のは輝きが時がたつごとにぶれている。

「うっ……くっ……くくっ……はーっ、はーっ」

「30分……良く持った方か。よし、休憩しよう」

 凪はプログラム・シンの成功率向上を目的に、精神修養を主に置いていた。

 クリスがいない四神の中で、プログラム・シンを成功させているのは辰美だけ。

 それ以外での技量は疑っていない為、訓練はこれ以外特に変化は与えていない。

「良いのかな、これだけで」

「構わん。私はお前たちを信じている--今回出る事になっている南波とフラウも、必ず本選に出て来るともな」

「そう言ってくれるのは嬉しいですけど--でもやっぱりボク、こうじっと何かに集中するより、体動かしてる方が」

「そうだな。よし、休憩が終わったら相手をする--手加減抜きでな」

「え?」

 その後、凪に徹底的にしごかれた辰美は、その翌日病室で目を覚ましたことは割愛。

 


 3人は同じ最強の名を共有する者として、水鏡怜奈と言うアドバンテージを得た裕樹の独走を防ぐべく、自身とパートナーの個々と連携の向上に余念がない。

 そしてそれ以外でも、目標は違えど最強の打倒、自らの名を知らしめるべく虎視眈々と爪を研いでいる。



 その渦中に裕樹と怜奈の2人は……

「あの、裕樹先輩……ここで、何してるんですか?」

「何って、昼飯食いに来たんだけど」

「みなも姉ちゃん、ドーナツ3つちょーだい」

「はーい……じゃなくて」

「知りあってはいても、俺達互いの事全然知らないから。今は互いを理解するための親睦期間--タッグとしての練習はもちっと後」

「……良いのかな、これ」

「急がば回れ、だ--で、お口に合いそうなもんあるか? 怜奈」

「えっと……初めて見る物が多くて、どんなものかが良くわからないんです。その……ゆっ、裕樹、は」


「名前で呼び合ってるね」

「--すごい変わり様れしゅ」

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