表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
353/402

学園都市の体育祭 タッグバージョン(8)

 花柳月

 学園都市医学部主席で、既に医療国家資格をいくつも取得した才女である。

 また、医学に関しては非常に貪欲であり、新薬開発や医療食の研究等で、学園都市内外で多大な貢献をしている人物。

「……やはり、ドクターのマッサージが一番効くな」

「ありがと。私としても学園都市最高の肉体のマッサージは、色々と勉強させて貰えてるわ--どっしりした質量と密度なのに、それがちゃんと使えるよう仕上がっている筋肉……まさに先天性と後天的が調和した、最高の肉体ね」

「そう言って貰えるのは素直に嬉しいな--では、しっかり頼もうか」

「何なら、皆が寝静まった夜に……」

「だから、子供の前でそういう表現はやめろ」

 ただ、性に関してかなり奔放であり、興味を持った相手に際どい発言や思わせ振りな行動をとって、からかう一面がある

 --男女問わず。

「子供? ……あっ、いっけない。お兄ちゃん看てもらおうと思ってたの、すっかり忘れてた」

「いや、忘れるな」

『それじゃ裕香ちゃん、一緒に……』

「芹ちゃん、野暮はダ・メ・よ」

 そう言って芹香に向けてウインクし、王牙のマッサージの手を止めて、裕香の元へ。

 軽く裕香の手を引いて、裕樹がいる部屋の前で--。

「……今腰痛めてるから、腕枕で我慢してね。絶対に体に、のしかかっちゃダメよ。何かあったら、お姉さんのD-Phoneに連絡してね」

 と耳打ちしてから裕香を中に促して、鍵がかかったのを確認して--。

「さて、続き続き」

『さっき、何話たんですか?』

「何かあったら、連絡してって。一応、飲み物と食べ物の入った冷蔵庫もテレビや本もあるから、しばらく2人だけにしてあげましょ」

 そして、裕香の甘えん坊を知ってる数少ない人物の1人であり、こういった気配りも出来る程度には大人である。

「……忘れてたって言ってた割に、そう言う気配りは普通にできるんだな」

『……確かに、素直に大人の女性だって憧れられる面はあるけど』

「人間って言うのはね、良い物と悪い物と意味がない物を混ぜ合わせて、それに愚かさっていうスパイスを加えて出来る物なの。多少変人な位じゃないと、世の中上手にはわたっていける物なのよ」

「--変人っていう自覚はあるのか」

「あるに決まってるじゃない」

 あっけらかんと言い放った言葉に、全員が何も言えなくなった。

 飄々とした態度で王牙のマッサージに戻っていき--そこで、表情が真面目になった。

「所で芹ちゃん、ユウとお嬢様のタッグ結成認定の話、もう公表したの?」

『え? ええ、もう公表はされてる筈ですけど--」

「じゃあ今頃、学園都市は大騒動ね--なにせ、下剋上は常識中の常識、新星の登場や古豪の衰退は日常茶飯事な、武闘派体育祭に投じられた一石--と言うよりは、隕石なんだから」

『いえ、隕石じゃ波紋処の話じゃありませんから。まあ--波紋じゃ済まないでしょうね、これ」



 --所変わって。

「--まったく、我を除け者にこんな事が行われていたとは」

 学園都市保安部庁舎、長官室にて。

「でも、意外でしたね。水鏡怜奈と陽炎詠の個人的な友好表明としてのタッグ結成、それを生徒総会が許可しただなんて」

「本来水鏡と陽炎は、勢力的に均衡が保てていた。だが、朝霧裕樹と言うジョーカーを陽炎詠が手にしたことで、それが崩れていた」

「それが近年の水鏡では暴走、陽炎では増長を齎していた--と言う話なら、俺も知っています。その事で、朝霧さんが水鏡に齎した損害はかなりの額、だから裕香ちゃんに目をつける輩も少なくはなかった事も」

「だからこそ、だろう。どちらの組織的にも、現状が続けばろくな事にならんなら--という所だろう」

 保安部長官、北郷正輝と保安部機動第一部隊長、中原大輔。

 この2名は生徒会からの知らせを前に、苦い顔をしていた。

「--ある物なんですね。たった1人が、組織の対立という均衡を大きく崩す、なんて」

「--だからこそ、肩を並べる事も必死なのだ」

「え?」

「いや、何でもない--それより大輔、お前のプログラム・シンの成功率は?」

「はい……漸く、3回に1回は」

「--今は上出来、とほめるべきか。ではそろそろ訓練だ、保安部の代表としての働き、期待している」

「はい」



 --所変わって

「へえっ、やっぱり水鏡んとこのお嬢さん、ユウさんと組むことになんのか」

「生徒総会の認定が下りた事も含めて、意外と言えば意外だね--でも実力的には、最高の組み合わせが出来ちゃったわけだけど」

「箱入りお嬢様なのに、最強と同格ってのもすごいな--でも、やりあってみるのも楽しみじゃね?」

 学園都市興行委員会

 そこに所属する夏目綾香と、事実上お抱え用心棒扱いとなっている吉田鷹久は、ニュースサイトを見て会話に花を咲かせていた。

「まあそうだけど--まずそこまで残る事を考えなきゃ」

「何弱気に--とも言えねんだよな、ここじゃ」

 学園都市武闘派体育祭。

 そこは学園都市保安部、生徒会SP、各企業、財閥のお抱えSP、フリーの武闘派が参加資格を持つ、内容的に最も危険なイベントであり--

 学園都市でも最も大きなイベントの1つであり、最も過酷で厳しいと名高いイベントでもある。

 今回の形式としては、最強と称される4人のタッグに許された本選出場シード権。

 その本選の出場枠、12組を決めるための予選が数回に分けて行われるシステムとなるが--。

「その予選だって、バカにならないんだよ。保安部の機動部隊長、生徒会SPの2部隊の猛者、各企業の有名SP、そして--」

「タカやユウさんみたいなフリーでも、名の知れた強豪--そして、それらの中に居るだろう、不世出の新星、だろ? 耳タコだぜ」

「わかってるんなら、油断せず一回一回を確実に--」

「タカ、この体育祭は“下剋上なんて常識中の常識”なんだろ? だったらびくびくすんなよ」

「--と、ああだこうだ言った処で、実際そうだね。負けを意識せず、勝ちを狙っていこうーー綾香となら、どこまでだって駆け上がっていける」



 --所変わって

「……お嬢様。よりにもよって、私にも無断でなんて事を」

 水鏡グループ所有の居住ビルでは……

 世話役兼護衛の蓮華が、ニュースを見て真っ青になりながら頭を抱えていた。

 周囲--特に裕樹を嫌っている怜奈の(女性だけ、それも名家出身の)SP、蓮華の部下たちが激怒する中で。

「蓮華様! なぜお嬢様が、よりにもよってあの蛮人と!!?」

「お嬢様が、あんな汚らわしい悪魔を選んだだなんて、絶対脅迫に決まっています!! すぐにでも……」

「--その前に聞きたいのだが、最近お前たちの間で“計画”と言う単語が出ているのは、どういう事だ?」

「--!? そっ、それは……」

「--話は後だ。この事は総帥に伝え、その後に行動する」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ