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風一夜(裕香編)

気分転換に、ふと思いついた枕物語って所です。

折角なので、みなもやひばりのも書きたいなー


最近は、気分の浮き沈みが激しい中で、色々ときついです。

皆さんも、心身の健康にはお気をつけて。



--体育祭タッグの続きも書きたい

「今日、一緒に寝ていい?」

 夕食が終わり、風呂にも入って就寝準備、という時分。

 いざ就寝、という所で突拍子もない事を--

「寝て良いも何も、勝手に入ってきてるだろ」

 --訂正、特筆するようなことが全然ない事を言い出した。

 付け加えると、裕樹と裕香は一緒に寝てる訳ではなく、ちゃんとそれぞれの部屋で寝ている。

 ただ、仕事が終わってうたた寝時を含めて、途中から裕香が布団に潜り込んで、結果として一緒に寝ている事になってしまっているのが、実情。

 勿論、裕樹も潜り込んできたその時に気づかない訳ではないが、黙認している。

「今日は潜り込むんじゃなくて、最初から一緒に寝たい気分なの」

「--気分かよ。まあ別に良いけど」

「ん、わかった」

 そういって裕香は、自分の部屋から枕をもって、裕樹のベッドに枕を置いた。

「?」

「今日は並んで寝たい」

 裕香が裕樹の布団に潜り込むときは、裕樹にのしかかる形で、胸に顔を埋めて抱き着く形。

 なので、裕樹はちと面食らっていた。

「それじゃ、寝るか」

「うん」

 裕香が先に布団に入って、裕樹が電気を消して、布団に入る。

 裕樹が目を閉じ--

「ねえユウ兄ちゃん」

「ん?」

 --ようとした所で、裕香が裕樹に話しかけてきた。

「今日の仕事は、どうだったの?」

「どうもしないさ。何事もなく、だったよ--裕香は?」

「今日は、家庭科でクレープ作ったんだ。で、その出来で委員長と喧嘩して--」

「ああ、またあの子か……よくケンカするなお前ら」

「委員長、ユウ兄ちゃんの妹っていう血統書と、自分よりも人気があるのが気に入らないっていうんだから」

「ケンカ友達、ねえ……」

 ふと、初等部の頃を思い出して--

「…………わからん」

「? どうかしたの、ユウ兄ちゃん」

「俺、そう言う風なケンカする相手、居なかったからさ」

 学校、剣道部、そして剣道をやめてからの格闘系の講習

 --昔から凪、王牙、正輝以外と対等にやりあえたことなどなく、それらともケンカ友達と言うにはあまりいがみ合った事などない。

「--口喧嘩、位なら宇宙やアスカともやったんだけどな。取っ組み合いになったら俺が勝つに決まってたから、今更だけどあの頃は皆から怪物かバケモノみたいに見られてた気がするよ」

「ふーん……でもそれ、なんかやだな。委員長と仲良くなんて想像もしたくない処か、顔も見たくなくて声も聴きたくなくて、同じ空気吸うのも嫌な位大嫌いだけど」

「--きついな」

「--これでも我慢してるんだよ。元々仲が悪かったんだけど、こんな険悪になったのユウ兄ちゃんを“堕ちた悪魔”呼ばわりされた時からだから」

「--初等部でも広まってるの、その子からだったのか」

 ……そりゃ、保安部崩れを差した蔑称とはいえ、日頃の行いが良いだなんて言わないけど。

 そう呟きつつ、裕香の頭を撫でてやる。

 裕香がその手を握って、裕樹にのしかかる様にして、胸元に顔を埋める。

「……ユウ兄ちゃん。“堕ちた”って、一体どこに落ちたっていうの?」

「知るかよ。そもそもが、勝手につけられた蔑称だぞ」

「--そうだね」

 裕香がゆっくりと眼を閉じて、寝息を立て始めた頃合いに--

「……ごめんな裕香。でも俺は確かに、裕香が誇りに思えるような理想の兄にはなれない。誰もが言う通り、俺の本性は堕ちた悪魔なんだ」

 --だから、これからもずっとその叶わない願いを抱き続けながら、苦しみ続けるよ。

 それが堕ちた悪魔ではない、俺の人間としての証明として。


 そう呟き、裕樹はそっと目を閉じ--寝息を立て始めた。

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