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学園都市のDIE事件ファイル(3)

通り魔事件は3件。

犯人は当然だがマスクと帽子で顔を隠しており、声の質と体格からして男性である事と、女性に対する強い恨みで正気を保っていない事しか情報がない。

「正気を保ってない、と言うのはどういう事だ?」

「通り魔って言ったって、実質的には暴行事件だからだよ。1件目こそセオリー通り、人通りの少ない時間帯及び場所での犯行だけど、2件目は人通りの多い繁華街で突然奇声をあげるなり襲いかかって、被害者の顔を殴打。その逃げる最中で起こった3件目は、進路上に逃げ遅れた女性に襲いかかって、人質にするかと思いきや同じように殴打してる」

「それに加えて、犯行も呪詛の様に恨み節を唱えながら……トラウマ物だねい」

 勿論、人通りの多い場所での犯行であり、無差別要素がハッキリと明るみに出した事件である為、自衛手段を持たない女子生徒は出歩く事が出来ない事態にまで発展。

 生徒自治の学園都市に置いては、都市機能がマヒしかねない事態にまで発展しかねない為、保安部は主に女子寮や女性が利用する通り等の警備を強化し、事に当たる事を決定。

 一応女子寮の襲撃も考慮に入れ、女子寮のある区画には機動部隊員を小隊規模で派遣。

「更には、俺達にも協力要請か」

「協力要請自体は、鮫島の情報を掴んでからだけどね。個人か合同かまでは分からんけど」

「S級手配犯が1人でも動いてるなら、大事だからねい」

「となると、ただの通り魔事件で済む訳も……」


 ピーっ!


「――!」

 保安部緊急コールが3人のD-Phoneから響き、3人は話をやめ表示されたマップの指定地へと急行を開始。

「いきなりか。確かこの地点は、機動部隊員が配備されてたはずなのに」

「となると――クリス、龍星、ちょっと良いか?」

「なにかねい?」



 ――所変わり、指定地地点にて。

「なんだなんだ? 保安部機動部隊ともあろうもんが、だらしねえ!」

 元生徒会SPのエースと言う経歴を持つ、S級手配犯鮫島剛

 その手に身の丈ほどもある、鋸の様な刃に刀身にびっしりと敷き詰められたスパイク、刃先に近い位置に綺麗な四角を描くハンマーが取り付けられ、その先に突き刺す刃を持つ、異様な風貌の大刀を振るい――。

「……皆、大丈夫?」

 その部隊の隊長を任されていた高峰光が、鮫島にやられた部隊員達に呼び掛ける。

 電子ツールは基本的に人を傷つける事は出来ないが、痛覚を刺激する事やダメージを与える事は出来る。

「なんだなんだ? 今日日女の保安部員なんて珍しくもなんともねえが、まさかおちびちゃんが隊長かよ?」

「ちっちゃくない!! ……それより、S級手配犯の貴方がなぜ!?」

「答える義理はねえよ。さて、と……九十九以外の相手も久しぶりだ。精々楽しませてくれよ、おちびちゃんよお!」

 片腕でブンっと頭上で1振りし、構えをとる鮫島に対し……

「……やるしか、ないかな」

 椎名九十九とは、幸いと言うか面識はなかった物の、実力自体は本物だった事は幾度となく聞いていた為、明らかに自分より格上の相手との対峙で、少々身体をこわばらせつつ光は構えをとる。

「おい、あんまりいい光景じゃないぞ」

「ん? ――おおっ、榊のダンナじゃねえか」

「ああっ。ちょっと見ないうちに、堕ちた様だな」

「別に堕ちた覚えも、変わったもんもありゃしねえよ――ま、おちびちゃんよりは構図的にも、やりがいはあるか」

「榊さん、加勢はしますからね!」

「あっ、ああ。頼む」

 幾度もおちびちゃん呼ばわりで、頭に来てる光と龍星は、並ぶ様に構えをとる。

「――良い声で啼けよ。この大刀・王鮫のエサどもよお!」

「そんな痛そうな剣で斬られるなんて、お断りだ」



 ――所変わって

「この! この! この顔があっ!!」

 マスクに帽子をかぶった男が、奇声を挙げながら女性にマウントポジションをとり、顔を狙って幾度も拳を振りおろしていた。

 男はマスク越しでも顔を歪めた笑みを浮かべ、呪詛の様な声を挙げながら拳を振り下ろし続けながら、狂喜していた。

「楽しいかい?」

「――!?」

 ――1人のさえない風貌の男、東城太助がポンと肩に手を置くまで、背後に立たれている事にも気付かない程に。

「邪魔をぉぉおおっ!!」

 楽しみを邪魔されて激怒しながら、太助に向けて襲いかかろうとしたその瞬間――


 ガシッ!


「――え? あがああっ!!?」

 男にマウントポジションをとられていた女性が、殴られた痛み等ないと言わんばかりに、機敏な動きで男の肩関節を極め、ねじ伏せた。

 太助がパチンと指を鳴らすと、その女性の輪郭がボヤけ、徐々に人としての外見は分解されて行き――

「うええっ? にっ、人形!!? ばっ、ばがなあああっ!!?」

「――まだ触れればバレる程度の代物なんだけどね。さて、と……」


 ゴキッ!!


「――さっさと済ませるかな?」

 気絶した通り魔事件の犯人を人形に抑えさせながら、太助は自作のタブレットとその他色々な端末をカバンから取り出し始める。

「何を済ませるんだ?」

「一体そのお兄ちゃんに、どんな価値を見いだしたのかねい? おねーさんにちょーっとお話聞かせて欲しいよん♪」

「――なんだ、気付かれたか」


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