新年会のサプライズ(2)
「流石に、よくわかっている」
「ああっ、なにせ俺達の勝負は……」
『一撃ぶつけ合ってからが、本当の始まりだ』
裕樹と凪が、互いにバックステップを踏んで裕樹が刀をリング外へ放り投げ、凪が孫悟空を下がらせる。
互いに右拳を握り締め、駆け出しぶつけ合い--。
「ぐっ……」
凪が押し負け、その隙に裕樹が凪の手首を握り締め、右腕を引き寄せ膝蹴りを凪の腹に叩き込む。
負けじと凪も、右手首を掴む腕を握り、襟をつかんで背負い投げ。
その背負い投げから逃れるべく、凪の左肩を掴んでそれを起点に倒立し、身体を翻し……。
宙返りを披露して、その勢いを利用しての踵落とし。
「……」
凪はそれを抱え込む形で、あえてその踵落としを命中させた。
それで終わらず、まだ空中の裕樹の腹にパンチをぶち込み、そのままの形で突進するように裕樹をロープにたたきつけーー。
上段、中段のロープで裕樹の体を挟み、背に回って首に足を回して三角締め、両腕を逆手羽に固める……。
「ちぃっ!」
その直前、裕樹が腕を振りほどいてロープから脱出。
凪の三角締めの足を掴もうとするが、解いて互いに距離を取った。
「やっぱこの高揚、たまんねえな」
「私もだ」
再び駆け出し、今度は蹴りの交差。
凪のパンチを裕樹が受け止め、裕樹の蹴りを凪が受け流し、拳打の攻防戦。
裕樹が拳を握り締め、凪が体をひねり、拳と回し蹴りのぶつかり合い。
「すっげー……あんな踵落としまともに受けきった上に、あんな難しい技をタックルしながら一瞬で決めるなんて」
「ユウさんの蹴り、北郷さんのパンチに劣るけど威力ある上にあの勢いだからね。僕じゃガードしたって受けきれるかどうか」
「それにしても、流石は凪……最強で俺と1番相性が悪いだけある」
綾香、鷹久、龍星はそれらの攻防にそれぞれの感想を述べる。
「……ねえひばりちゃん、今何があったか分かった?」
「全然わからないよ……ただただすごいって事くらいしか」
「あうあうあうあうあうあう……」
「みなも先輩、深呼吸深呼吸」
『--訓練は時々見に来ることはあるけど、やっぱり実践となると違う』
つぐみ、ひばり、みなも、宇佐美、芹香はそれぞれ呆気に取られていて……。
「……」
その中で唯一、王牙だけは静かに真剣な表情で、その勝負を見据えていた。
勿論、周囲の警戒は怠っては居ないのは、生徒会SP護送警備隊長たる故である
「……」
「ん? 無理ないか。相手が相手だ、裕香ちゃんも……」
「大丈夫だよ、王牙さんだってわかってるでしょ? ユウ兄ちゃんがこんな簡単に終わる訳ないもん」
「はっはっは、流石は朝霧の妹だ」




