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学園都市のDIE事件ファイル(1)

 DIEシステム

 デジタルデータを現実の物として具現し、道具あるいは一種の生命体として形作る、学園都市の根幹を成し、生活に欠かせない技術である。

 これはまだ発展途上にある技術で、学園都市においては電子ツールや電子召喚獣のみならず、DIAシステムを発端とした研究は、学園都市の研究機関の職員及び専攻学生たちにより、大小様々な規模で幅広い分野を目的とした研究が行われている。

「――そもそもDIEシステム自体、VRバーチャルリアリティを逆転させた発想が完成させた様な物だからね。やり方次第じゃ、如何に現実で不可能な事でも、デジタル上で可能なら現実でも可能に変えられるかもしれない――言うなれば常識を書き変える可能性を秘めた技術なんだよ」

「じゃあ人が空を飛んだり、海の中でも生活出来るようにも?」

「出来るかもね。あくまで方法を確立させたら、の話だけど」

 その研究者の1人、医療方面での研究を進めていた東城太助にとってのDIEシステムは、医者としても研究者としても、大いに探究心を刺激するシステムだった。

 その可能性に惹かれ、理解し追求していく内に、その危険性においても誰よりも深く理解してしまっていた。

「――けど古今東西、力って言うのはどうやったって人をバカに……いや、頭を腐らせる物だからね。有用性、可能性を追求していく内に、僕の研究が危険な産物に繋がってると気付くのに、そう時間はかからなかったよ」

「先生の研究が?」

「そう――まあその辺りのエピソードは置いておいて……」

「今話してやってもいいんじゃないか?」

「――物には順序があるんだよ、剛」

 さえない風貌の東城太助の話を、白河ユキナが真面目な表情で聞いていた、なんとなく授業を思わせる雰囲気に割り込んできたのは、その場に似合わないごつい風貌の大男、鮫島剛。

 話を遮られ、むすっとした太助の眼前に、剛は苦笑しながらファイルを突き出す

「どうしたのさ?」

「頼まれてた調査、終わったぜ」

「……そう」

「しかし、どういう風の吹きまわしだ? 女子生徒狙いの通り魔事件を調べろだなんて」

「――気になる記述があったからだよ。」

 最近学園都市各所で起こっている、女子生徒をターゲットとした通り魔事件。

 被害者はいずれも女子生徒で、いずれも顔を狙って殴り、ナイフで斬りつける等の傷害暴行を受け、逃げる際にも女性を見つければ無理をしてでも暴行を仕掛けると言う事件が起こっている。

「…………剛、準備しといて」

「よしきた」

「何か気になったの?」

「ユキナはお留守番だよ。僕が帰ってくるまでに、これ済ませておいて……良いね?」

「――はーい」

 ユキナにノートを1冊手渡して、太助は剛と共にその場を去り――

「――で、どういう事だ?」

「わかる人間にはわかるんだよ。まあ犯人捕まえて、確認しなきゃいけないから……頼めるかい? 剛」

「任せときな――と言いたいところだが、どういう事だよ?」

「これから確証を取りに行くから、予想の範疇の曖昧な事は言えないよ」

「――まあいいがな」


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