学園都市の海水浴騒動!(プロローグ)
『……ボクニハモウ……』
--やめろ
『ナニモ、ナイ……カエルバショモ、タイセツナヒトモ、イキルモクテキモ』
--やめろ
『ーーニクシミ、ゾウオ、ヒテイ、サベツ、ボウリョク……コノセカイニアルノハ、タダソレダケダ』
--やめてくれ
『マサキサマモ、ナカマタチモ、ミンナカワリハテテシマッタ。マモリタイ、スクイタイヒトタチハ、アシタサエソンザイシナクナッテシマッタ』
--なんなんだ、これは……これは、僕の記憶にない。
なのに、これは間違いなく僕だ……どす黒い何かに、憑りつかれてしまった僕だと、わかってしまう。
『ユルサナイ……スベテヲ、オワラセテクレル--ボクガ、サイゴノツミトナリ、ヒトトイウシュニシュウシフヲウッテヤル』
この、頭の中に強制的に流れてくる情報……これは、僕のIF
『--ミンナ、ゴメン』
その謝罪の言葉を最後に、何かが終わった気がした。
何かが始まった--いや、始められた気がした。
そして……頭の中で、何かが破れはじけ飛んだ感覚を最後に、そこで記憶は途絶えた。
その記憶の元となった自分を“魔王”と呼ぶ声を境に。
夏と言えば、海
海と言えば……
ドカンっ!!
「--お待たせ」
「……相変わらずすごいな。お前の気配感知、覗きの時とか」
「依頼人に女が多いから、自然に身についた」
「……自然に身につくことなのか?」
公衆更衣室の覗きを対峙した裕樹が、皆の所へ戻ってきた。
「さ、どうぞ」
「覗き魔退治は良いけど、覗いたりしてないでしょうね」
「裕香に軽蔑されたら俺それだけで死ねるんだけど」
「--とても学園都市最強の1人がしゃべる内容じゃない。けど兄がいる身としては、信用は出来るかな」
と、男女に分かれて更衣室へ。
それから男性陣は、パラソルとシートを準備し、女性陣の到着を待っていた。
「しかし、まさかお前たちも来るとはな」
パラソルを立てる龍星が、同じくシートを引いたり遊具の準備をしている3人
北郷正輝、御影凪、鳴神王牙にそう声を掛ける
「我等とて、ぶつかり合うだけが絆ではありません。こういった交友も必要でしょう」
「しかし、朝霧と違い我等も責任ある立場にありますから、中々そういう時間は取れない。だからこそ……」
「こうして4人そろえたからには、目いっぱい楽しみ親睦と団結、英気を養おうではなありませんか!」
「だな……じゃ、今日はお互いいい思い出作ろうぜ」
そういって、裕樹、正輝、凪、王牙はそれぞれ1回拳を軽くぶつけ合った。
「--同じ領域で競い合い、高めあい、認め合う間柄か」
「立場は違えど、心根は同じ--って感じですね」
「だからこそ、最強の座を競い合いに誰も入り込めないんだろうけど」
龍星、鷹久、光一がそれぞれそう言いあっている。
「さて、そろソロ女性陣もこっちに来るころあいかな」
「ーー朝霧、まずお前に言いたい事がある」
「ーー朝霧、女性陣が来たらまず水着姿をほめてやれ。だが、身体的なことは絶対言うな」
「ーー朝霧、お前だからこそ険悪な雰囲気にならんのだからな」
「--おい」
光一が何気なく言った言葉を受け、正輝、凪、王牙はそろって裕樹にレクチャーし始めた。




