支倉ひばりのお子様(ランチ)クッキング(4)
その後、紆余曲折を経て料理大会当日。
「ちょっと待って! なんか色々と大事な事すっ飛ばしてるよ!」
「ひばり、そろそろ行くぞー」
「あっ、はい」
子供の試食相手欲しさに、裕樹たちの家に入り浸るか裕香が止まりに来るか。
それらのループで、裕樹が会場に送り届ける事がいつの間にか決定事項となっていた。
「どっち乗る?」
「それなら、サイ……」
「私サイドカーが良い!」
「……じゃ、飛ばすぞ」
「安全運転でお願いします」」
行きは、サイドカー付きの裕樹のバイク。
裕香がサイドカーに乗って、ひばりは裕樹の後ろ。
「--結構大きいですね、裕樹さんのバイク」
「そりゃ普通のより大きいうえにピーキーだけど、ひばりが小さいだけだろ」
「ちっちゃくないよ!」
「えーっ、ひばりの場合大きいのは胸位……」
「ゆ・う・き・さん?」
「……ねー、時間大丈夫?」
裕樹とひばりのやり取りは、今日も変わらず絶好調だった。
そして、会場。
「はい、到着」
「ありがとうございます」
「がんばってね、ひばり姉ちゃん」
「うん、ありがとう」
裕樹はバイクを、出場者の集合場所付近に停め、ひばりをゆっくりと下ろす。
その光景は……
「おい、あれ朝霧裕樹じゃないか? しかも兄妹そろって、どうしてここに?」
「観戦じゃないか? ほら、妹の友達連れてきたわけだし」
「けど変じゃないか? 観客席の入場口は逆方向だぞ」
「まさか、あの子が参加者なんてことは……」
参加者の取材に来ていた報道陣にしっかりとみられていて、ひばりが参加登録を終わらせると……。
「え? ホントに参加者!!?」
「マジかよ、あれで高等部!? --って事は、こうしちゃいられん! ねえ君、ちょっと話良いかな!?」
「朝霧兄妹とは、仲いいの? 一体どんな関係!?」
「まさか、朝霧裕樹の恋人ですか!?」
「彼との馴れ初めをぜひ!」
「ひえっ!!? なっ、なんですか一体!!?」
一斉に(主にゴシップ目的で)ひばりに群がり始め、テンパったひばりはそのまま人波に飲み込まれてしまった。
「おーい、そろそろ組み合わせ抽選会が……あれ、なんだあの人だかり」
「あっ、綾香。いや、ひばりが参加登録を終わらせた途端、急にマスコミが群がってきて」
「ひばり姉ちゃん、そんなに人気がある料理人なのかな?」
「……なあユウさんに裕香、まさかバイク載せて来たとかじゃねーよな?」
「あれ? なんでわかったんだ?」
「……やっぱり」
学園都市でも屈指の有名人である自覚がない裕樹に、綾香も流石に呆れたため息が漏れた。




