支倉ひばりのお子様(ランチ)クッキング(3)
『課題が何であろうと関係ありません。主席として恥ずかしくないよう、皆の理想と手本になれる様腕を振るうだけです』
『流石は、学園都市料理部門主席。ゆるぎなき自信と、余裕が醸し出されていますね』
学園都市のテレビのインタビューは、各分野のトップクラスがメインとなる。
頭を丸め、メタボ気味な恰幅の良い、王牙にも負けない2m以上の巨漢でありながら、朗らかに笑みを浮かべる料理人。
生徒会専属の料理人たちを纏めあげる総料理長である調理部主席、明治我夢--通称“布袋の我夢”
ひばりも出場する料理大会のコメントとして、報道されていた。
「--流石、頂点に立つ人ってどこかこう……貫禄と言うか自信と言うか、どこか違って見えるよ」
「ふーん……ねえひばり姉ちゃん、ユウ兄ちゃんもそう思う?」
「うん、すごいと思うよ--時々忘れそうにはなるけど」
テレビを見るひばりの隣で、裕香は行儀よく座りながら一緒に見ていた。
「--仲いいなあ、2人とも」
--裕樹の代わりに、鷹久が招待されてるためである。
「支倉さんも、この大会出るんだって?」
「うん。この大会の賞品の検品、あたしが担当してぜひ欲しいって思ったから」
「--まるごと一匹だったよね確か」
高価な品の為、鷹久も護送についておりその時目の当たりにしている。
「確か、綾香ちゃんが役員だったよね。最近手掛けたイベントの評判良かったのに、どうして急に?」
「最近料理大会の企画もやりたいって言い出して、委員長もいろいろな経験を積ませればよりいい企画が出せるだろうって」
「そうなんだ」
「ねえタカ兄ちゃん。それなら綾香姉ちゃんに、初等部でも出れる女の子向けのイベントやってって頼んでよ」
「初等部の……まあ、出来なくもないけどどんなの?」
「メイクとかオシャレとか」
「嫌がると思うよ。絶対自分がやられるって」
--所変わって」
「ぶぇっきしっ!!」
「--まるっきりおっさんのくしゃみとしか思えでででででっ!!」
「誰か噂してんのかな?」
綾香のくしゃみにいつも通りの発言をした裕樹の頭に、セレーナがかみついた。
「ったくもうっ、アスカのイクシオンと言い綾香のセレーナと言い、なんでこいつらいつも俺ばっか」
「電子召喚獣じゃなくたって、ビンタ痕とかひっかき傷とかつけてること多いじゃん」
「好きでつけてる訳じゃないんだぞ」
強盗傷害事件の捜査に出向いた裕樹に、綾香がついてきていた。
「大体なんで綾香が?」
「委員会の人間だから。まあ足手まといにゃならねえよ」
「調査にやかま……騒がしいの、じゃなくて、賑やかなの? を連れて来るってどうなんだろうか」
「少なくともユウさんと漫才しに来たわけじゃねーから大丈夫だ。それよりさ--」
「別におれも漫才しに来たわけじゃないんだが、なんだよ?」
綾香の突然の問いに、裕樹は疑問符を浮かべる。
「最近ひばりと良い関係って噂聞いたんだけど」
「いい関係? --なんか、鷹久にもそんな事聞かれたような。で、どういう意味?」
「“恋”とかそういう話--あたしも苦手だけどな」
「“鯉”?」
「……言葉はあってるのに、なんか意味が違う気がする」
「しっ!」
「え? --おっ、ビンゴか?」
「--俺が奥の奴に突っ込むから、時間差で手前頼む」
「あいよ」




