学園都市のドールハザード(2)
『フ・ク・シュー! フ・ク・シュー!』
『ホーフック! ホーフック!』
フランクなアルト、陽気なフローラ。
それらのイメージは今や、人間で言う狂気の笑みと化していた。
売られた数その物と言う数の人形たちは、その大半が今や軍勢と化し学園都市を闊歩する。
「ひっ、ひいいっ!」
「やめっ、やめてくれえっ!!」
自身たちを処分しようとした寮監全員を吊し上げながら、学園都市を闊歩する。
その光景は、さながら猟奇的なホラーその物だった。
--所変わって、屋台通り。
「……大丈夫?」
人形たちが反乱を起こす少し前、屋台通りに裕香の友人2人が遊びに来ていた。
2人の手には、アルトとフローラの人形が抱かれていて、それらを交えてにこやかに笑っていた所--
『ナカマヲカエセ!』
『ナカマヲカエセ!』
そこにアルトとフローラの一個小隊が、裕香たちの抱いてるアルトとフローラを狙い、襲い掛かってきて……
裕樹の手で、人工知能の搭載箇所である頭を、全部壊したところで今に至る。
「あっ、朝霧先輩……」
「--気分悪くしたんなら謝る。けどリアルに明確な敵意を持ってたから、こうしなきゃ無差別に被害が出てた」
「でも、なんで人形が動いて……」
「説明書に書いてあったよ。アルトとフローラには、一定量の学習値を得ると自立駆動機構が起動するって。おそらく処分を強行されたのが引き金だろうな」
そういって、裕樹は胴体だけになった人形を拾い上げた。
「あの、裕樹先輩。これ……」
「ん?」
みなもが差し出したのは、ニュースがうつされてるD-Phone
そこには、人形が人を襲いながら大行進している様子が映し出されていた。
そして、こうなった経緯が語られているのを聞いて……。
「……ブームが過ぎ去った弊害って奴かね」
「でも、ブームが過ぎたのちょっと前ですよ。なのにこの子の服、こんなにほこりまみれになってる」
「こっちは服どころか、人形そのものがボロボロだよ」
「よく見たら、手足がない子もいるよ。それも、引きちぎれたような……」
と、裕香たち初等部仲良し3人が、裕樹の手で壊された人形の残骸を見ながらのセリフに……
「……随分とぞんざいな扱いされた子ばかりなんだね」
「……反乱が起きるの、無理ない気がしてきましゅ」
つぐみとみなもは、苦笑いだった。
『フ・ク・シュー! フ・ク・シュー!』
『ホーフク! ホーフク!」
そこに、先ほどとは比較にならない大音量の掛け声が近づいてきていた。
それも人間ではなく、人形のそれが
「なんか、さっきよりも大勢の声のような……」
「ここで仲間が壊されたことを察知したか--仕方ない」
裕樹がD-Phoneを取り出し、どこかに連絡をして--それを切ると、掛け声のする方に目を向ける
「ユウ兄ちゃん?」
「保安部呼んだ。だから裕香、皆とすぐに非難するんだ--俺が食い止めるから」
「え? でも……」
『フ・ク・シュー! フ・ク・シュー!』
『ホーフク! ホーフク!』
「--つぐみ、みなも、すまないが」
「はい--裕香ちゃん、こっちへ」




