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学園都市のドールハザード(1)

「ふーん、これが今初等部の間で流行ってる人形?」、

「うん。お兄さんのアルト」

 人形を買ってすぐ、朝霧兄妹は屋台通りに赴いていた。

 裕香は休憩してたみなもに見せて、談笑に花を咲かせている。

「兄妹設定なのに、セット販売じゃないんですか?」

「そうみたいだ。まあDIEシステム仕様の人工知能搭載の割に、無理をしてるって位に安いからかもしれないけど」

 そしてその傍らで、つぐみと裕樹がその様子を見て話していた、

「そうですね。DIEシステムの仕様品って、すっごい高級品なはずなのに」

 実はそこも、兄妹人形が完売御礼の一員を担っていた

 現在の学園都市では、DIEシステムの仕様品はどうやろうと、コストも手間もかかってしまう金喰い虫である。

 更にはそれらの悪用で、かつて裕樹の暴走を引き起こした事例の様に、学園都市の存続が危ぶまれる事態が引き起こされた例もあり、その利便性の高さは今もなお学園都市生徒総会や理事会を悩ませている。

「でも子供のおもちゃに人工知能なんて、まるで昔見た映画みたい」

「映画?」

「はい。人形に人工知能を組み込んで、人に反乱を起こすっていう」

「ああっ、その手の事件は何度か手掛けた事あるよ。幸いそんな賢くもないから、すぐ鎮圧できたけど」

「……やっぱり、あるんですねそういうの」

 裕樹の脳裏には、ぬいぐるみや人形が群れを成して迫ってくる光景。

 それも、アニメやメルヘンの要素など欠片もない、ホラー一色のそれが思い浮かんでいた。

「さあアルト、みなも姉ちゃんだよ」

『ミナモ、ネエチャン?』

「そう、初めまして」

『ハジメマシテ、ボクアルト』

 ふと、裕香とみなもの間で会話を交わしているアルトを見てから……。

 アルトの仕様説明書のある項目を読む。、

「……杞憂ですめばいいんだがな」

「? どうかしましたか、裕樹先輩」

「いや、何でも……ただ喜怒哀楽あるんだから、仲のいい友達として上手くやっていければいいって思っただけ」

「そうですね。でも裕香ちゃんなら大丈夫ですよ」

「違いない」

 この裕樹の杞憂は、ブームと言う一過性の流れが過ぎ去っていく頃に当たってしまう事となる


 --それから少し時が経って。

 兄妹人形、アルトとフローラは次第に需要が薄れ、徐々に飽きられていった。

 しかしただの物ではない、高度な人工知能を搭載したそれらは、ただ見放され捨てられる現状に怒るか悲しむかが出来てしまう。

 初等部寮には、人形たちの泣きわめく声が響くようになり、それに怯える初等部寮生に困り果てた寮監達は一斉処分を決行し--。

『ヨクモステタナ!』

『ヨクモイジメタナ!』

『トモダチナノニ!』

『ウラギラレタ!』

『シカエシダ!』

『フクシュウダ!』

 その際、人工知能の学習量が一定値を超える条件で起動する、自立駆動機構が起動。

 人形たちの反乱により、処分を決行しようとした寮監達は重傷を負わされ、学園都市にアルト人形とフローラ人形の軍勢が闊歩することとなった



 --所変わって。

「……やっぱりこうなったか」

「先生わかってたの?」

「ブームなんて一過性の物で煽られた、一時の感情で買う物じゃないよこれは。喜怒哀楽が存在する相手に対して、経過があまりにも無責任過ぎる」

「--そうだね。人形たちも、捨てられたことを悲しんだだけなのに」

「そうみてれば起こらなかった事態だよ」

「それで、どうすんだいセンセーよお?」

「自業自得に僕たちが関与する必要はない」

「厳しいねえ」

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