屋台通りの珍事(?)
「裕樹、何見てるんだ?」
「見合い写真」
「へえっ、見合い写真……何いっ!!?」
普段聞くことがない龍星の動揺した大声が、屋台通りに響き渡った。
「--そんな驚くことないだろ」
「いや、すまん。つい……学園都市で見合い話なんて、聞きはしても実際見る事はなかったからな」
「今絶対言葉選んだろダンナ--前からあったよ。全部断ってただけで」
「断ってたのか!?」
「だって裕香が“お見合いで決まったお姉ちゃんはやだ”って嫌がるから」
「え? そうなのか? 意外だなそれは」
年齢の割には人懐っこくある物のしっかり者の裕香の、ちょっと意外な一面を見た気分の龍星だった
「ちょっと意外、かな。お見合いとはいえ、裕香ちゃんなら歓迎するって思ってたのに」
「--そう、だね」
一応、裕香がひた隠しにしてる甘えん坊な一面を知ってるみなもは、なんとなく想像は出来ていた。、
「じゃあなんで見てるんですか?」
「商売上のお得意さんからだから、眼は通す位はしないと--家でゆっくり見る気にもならんから、こうして道中見てる訳」
「成程な。しかし……」
裕樹が見てる見合い写真を、龍星が横から覗き込んで……ぎょっと眼を見開いた。
「お前これ……」
「知ってるの?」
「知ってるも何も、芹の友達の生徒会役員なんだが……しかも古くからの名家の生まれだった筈だぞ」
「--そうなのか」
続いてつぐみとみなもも、1枚とって開くと……
「「……私、この人知ってます」」
「え? どれ?」
「同じ医学部で、しかもお父さんが大病院の院長だって」
「こっちは、美術館をいくつも所有してる大企業の娘さんれしゅ」
「まあそれ位は、全部陽炎財閥からのだしね」
「--動機がなんとなくわかりましゅ」
「もしかして、このお見合い写真って全部玉の輿……いえ、逆玉の輿?」
「考えてみれば、裕樹の奴デリカシーこそ致命的にないが能力だけは本物だから、欲しがるのも無理もないが」




