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裕樹と宇佐美の1日(2)

 芸能科生にとって、宇佐美やアスカの様にライブイベントで成果を挙げるばかりではなく、イベント系の仕事も飛躍のチャンスとなる。

 宇佐美の場合、歌謡祭で超新星と言われていてもまだ1年であり、イベント系の仕事に関しては、まだまだ経験不足。

 “才能でどうにもならない物とは経験であり、それを考慮する事も仕事を依頼する側の義務である”というのが学園都市の方針である。

「悪いけど、却下させて貰うよ」

「……あの、条件に何かご不満でも?」

「条件じゃなくて、内容がきつ過ぎるんだ。超新星だなんだって言っても、宇佐美はまだ1年だって事を理解した内容とは思えん」

「あっ……」

「雇用側で遵守する学園都市の方針位知ってるだろ? --話は以上だ。お引き取りを」

「……わかり、ました」

 宇佐美の仕事方面のスケジュール管理は、主に裕樹がやっている。

 一応、アスカの時にそう言った業務もこなしていた為、実質護衛兼マネージャーである。

「……なんだか、気が重いなあ。仕事をより好みだなんて」

「何言ってんだ。宇佐美は本当なら、まだ段階を踏まなきゃいけない時期なんだよ。実力も才能もあるのは認めるけど、まだ経験が伴ってないんだから無理にしかならないよ」

「――無理してるつもりは」

「宇佐美。育てるのが人であって、使うのは物だ。言いたい事はわかるな?」

「……わかった」

 真面目な顔での宣告に、宇佐美も黙ってうなずかざるを得なかった。

 そして、間を置いて苦笑する。

「結構真面目に考えてるんだね」

「失礼な。脳みそ筋肉だとでも思ったのかよ?」

「女性関連限定で学習不可能なだけでしょ? だから女性に関してだけは残念な、頼れるボディガードだとは思ってるよ」

「……頼れるって部分だけはありがとうって言っとく。っと、そろそろ時間だ」

 顔をしかめて、裕樹はD-Phoneを取り出し、次の宇佐美のD-Phoneにデータを転送し始める。

 流石に裕樹も学生の身である為、宇佐美につきっきりと言う訳ではなく、受講する講義が重なる場合もある。

 その場合は宇佐美にカグツチを預け、カグツチを番犬代わりに

「んじゃ、次はダンスレッスンだったっけ? 送ってく」

「うん。いつものように、休憩スペースで待ってるから」

「わかった」

 それから裕樹のバイクで送って貰い、着替える為に更衣室へ。

「よろしくね、カグツチ」

『グルルっ!』

 デフォルメサイズと言えど、背中に宇佐美が跨れる位の体躯を持つ火竜型電子召喚獣、カグツチを伴って。


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