屋台通りの日常
DIEシステムの進歩=学園都市の変化
と表現されるように、学園都市の内情とDIEシステムは、善かれ悪しかれ密接な結びつきがある。
「バナナ、パパイヤ、マンゴー……と。ユウ、龍星のダンナ、そっちに下ろして」
「--俺、ヤシの実の実物なんて初めて見た」
「俺もだ。しかし光一、よくこれだけ仕入れられたな」
「全部農業科の、DIEシステム新技術の試験用温室でとれた、新鮮なもんだってさ」
「農業科ねえ……流石は学園都市、学べない事はないなんて言われてるのも、伊達じゃないか」
食材などは、外部から仕入れる物以外にも、自給兼農業科や畜産科の学習目的の施設がある。
それらを含めた学園都市の施設の大半にはDIEシステムの恩恵があり、DIE専攻の学生が管理、運用に携わっている。
「わあっ、マンゴーだ。それにパパイヤにバナナもこんなに」
「これだけあれば、新メニューがたくさん作れましゅ」
「楽しみ♪」
「……会話に混ざれない」
つぐみとみなも、裕香がそれらを見てどう調理しようかと楽しそうに話してる傍ら……
料理が下手な宇佐美は、居心地が悪かった。
「まあ人には向き不向きがあんだから……」
バキッ!!
「あんま気にすんなよ、宇佐美」
「……ユウが言うと、異様に説得あるわ」
裕樹がそう言いながらヤシの実に“素手で”穴をあけ、ストローを差すと宇佐美に差し出した。
「あっ、ユウ兄ちゃん。私も飲みたい」
「私もお願いします」
「私も飲みたいれしゅ」
「おうっ」
バキッ!! バキッ!! バキッ!!
「……流石は最強、基礎能力が普通とは違うな」
「ダンナ、パイナップルをそんな豪快な喰い方するな」
「プログラム・シンの特訓、結構精神的な負担がでかいんだ。こういう美味いもん食って、英気養わんと気が滅入る……それも、こういう風にな」
「意味わからん」
裕樹の手で、ヤシの実に穴があけられ、ストローが差されて裕香、つぐみ、みなもに手渡される様子を、感心しながら龍星は眺めていた。
光一の手で、元の形を保ったまま皮が切られたパイナップルを、そのまま豪快に丸かじりしながら。
「そうだ光一、この南国フルーツで1つお菓子の家を作ってくれないか?」
「女房への差し入れ?」
「ああっ……って、普通に女房と言うな」
「というか、普通に反応したろ今」
「相変わらずなんだね。兄さんの秘書なんて、すごく忙しい合間だからかもだけど。それにしても、おいしいねこの果物」
「宇佐美、太るぞ」
バチーーンッ!!
『--はぁっ』
「?」
屋台通りにため息がコダマした。




