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PV撮影に潜む影(8)

 所変わり、屋台通り。

「……これって、ユウ兄ちゃん!?」

「どうして、なんでこんな!?」

 裕樹が屋台通りを発って、裕香が戻ってきてすぐ、臨時ニュースとして報道された映像。

 裕樹と公人が公の場で乱闘を繰り広げている場面が、大々的に報道されていた。

「どっどどどどどっ、どういう事れしゅ!?」

 いつも休憩所として利用してるスペースで、突如報道されたニュースを3人は見ていた。

 みなもが動揺している中、ふと龍星が裕樹の背に、裕香と同じくらいの少女が怯えながらしがみついてるのを見つけ--

「どうやらしくじったらしいな」

 龍星は仕事上、公人と何度か相対し--その都度敗れていた。

 特に……

「あっ、まずい!」

「え?」

「やられた……あいつ得意のチェーンデスマッチだ。ああなったら、幾ら裕樹でも勝ち目はかなり低いぞ」

「そっ、そんなに強いんでしゅか!? あの人」

「荒川公人、学園都市手配犯で唯一、裕樹たち最強4人と相対できる実力者で、パワーに関しては王牙を凌駕する……だから、ああなったら」

 映像では、裕樹が公人に捕まり頭突きを何発か受け、ボディブローを叩きつけられ--

 頭を掴まれ、顔面から街路樹に叩きつけられ……そこで映像が途切れた。

「……ユウ兄ちゃん」

「……ユウ」

「ねえ、お兄ちゃん」

 裕香と宇佐美を見て、ふうっとため息をつく。

「裕樹の目の届かないところを守ってやる……それが俺に出来る、最大の援護だ。それに、俺が行ったって盾にもなれん」

「……」

「今は信じてやろう……裕香ちゃんの兄で、学園都市最強を」



 --一方。

「……ふぅっ」

 所は、生徒総会長室前

 理事会への説明も終わり、無事裕樹名義での罷免状と捕縛命令を出す許可を得た。

 ……のだが、胃潰瘍を患っている身としては、あの場の緊張感は負担が大きい。

「それにしても、朝霧の名を出した時の、お婆様の安心のし様ときたら……はぁっ」

 七光り--そう呼ばれることを大和は忌み嫌っている。

 祖母は身内のひいき目なしに尊敬しているし、総会長となった事は祖母に近づけた様で嬉しくはあった。

 しかし、現実はそう甘くはなく--生徒総会では、常に影がかすむ。

「せめて、あの安心をさせられる様になりたかったのに……」

 そう呟き、総会長室のドアを開け……

「なら、させてあげれば良いじゃない」

 ある筈のない出迎える声に、大和は目を見開いた。

「……やあっ」

 普段、総会長としての執務にいそしむ椅子に、我が物顔で腰かけているのは、東城太助だった

 近くには、見慣れない少女が太助に寄り添うように隠れている。

「とうじょ……むぐっ!!?」

「お静かに」

 即座に駆けだそうとした大和を、横から九十九が口元をひっつかんで黙らせた。

 ドアを閉めカギをかけ、引っ掴んだままに太助の前に差し出す。

「ごめんね、勝手にお邪魔して--君に頼みがあってきたんだ」

「むっ……」

「悪いけど、返答は認めない--君は今すぐ、この少女と情報を理事会に提出するんだ。朝霧君が追ってる事件、君達なら大人が絡んでる事は考えてるだろ? それは正しい」

 だけど……と間をおいて、太助はそばに置いてある(自前で用意した)コーヒーを一口。

「だけどね、その大人はこの愛娘を誘拐され、止む終えず協力させられてたんだ。それを僕達で助け出した……九十九。一旦離していいよ」

「……なんだと? じゃあ、もしかして」

「いや、朝霧君がこの事件に関与したのは偶然だよ。僕より彼の方が動くの早かったからね……というわけで、ここでお別れだ。後はあのお兄さんの言う通りにすれば、お父さんの所へ帰れるからね」

「……うん」

「--穏便かつ平和的な解決を期待するよ、井上大和生徒総会長」


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