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PV撮影に潜む影(6)

 屋台通りで、そんなやり取りが行われている時分。

「--やってくれたね朝霧君」

 裕樹の大立ち回りが掲載されたサイトを表示した中で、生徒総会は臨時会議を開いていた。

 学園都市中のメディアはこぞって裕樹の大立ち回りを報道し、住民も皆その記事に沸いている。

「フリーランスと言えど、最強の立ち振る舞いが学園都市にどういう影響を……ぐっ、くくくっ」

 井上大和は、総会長として学園都市に与える小さくはない影響を危惧し--

 胃潰瘍を押して出席している事を忘れ、つい叫んでしまい腹を抑えた。

「ちょっと待ってください。ユウ……いえ、朝霧裕樹がやった事については」

「確かに、誘拐あるいは行方不明の初等部女子の救出のため--と言うのは、救出された少女たちという証人がいる以上、事実であることは認めます」

「受け入れ先の病院でも、かなりのショックを受けているという報告も上がっていますから、正当性があるのも認めます」

「だが……経緯に少々違和感がある。これだけの人数の誘拐の報、保安部は何故何もしていない? 北郷正輝保安部長官」

 総会は基本的に、総会メンバー5人による会議となる。

 それ以外の参加者と言えば、各部門の最高責任者--保安部の場合、北郷正輝となる。

 総会計、天草昴が静かに正輝に問いかける。

「誘拐の通報は、確かに各詰所から送られてきてはいました。しかし、こちらにはログこそ確認できはしても、誰が受け取ったかがわからない状態です」

「--わからないとは?」

「誰が受け取ったかが、何故か確認ができないのです。ですから保安部のシステム上、誘拐に対策も捜索も出来ません」

「それで、朝霧君に依頼したと?」

「いえ、それらの誘拐事件に関わりがあると思われる者が、朝霧の妹裕香ちゃんを狙ってきたのを捕まえた経緯で」

「……成程。巻き込まれた経緯でしたか--それで、その関わりがある人物の情報は?」

「既に保釈金を支払ったうえでの釈放ーーと、書類上では成立しております。その書類にも、誰が受け見受けしたかは記されておりません」

 正樹の説明を聞いて、昴が成程と頷いて……

「--それ以外の通報は?」

「それは、問題なく入ってきております」

「ふむっ……」

 と、そこで一呼吸を置いて、昴はお茶を一口。

 何やら思案し始めると--その様子を見ていた白夜が、成程と頷いた。

「井上総会長。理事会に連絡し、朝霧君の行動を理事会からの正式な依頼とすることを提案します」

「なにっ!?」

「ならば、罷免状と拿捕許可証も必要か。朝霧ならば、問題はあるまい」

「罷免……拿捕……待て、一体何の話をしている?」

 理事会への意見を述べられるのは、総会でも総会長だけの権限となる。

「保安部の通報システムは、学園都市の治安を支える要であり、その職務中は特に厳重な監視と記録が行われています。そして、それに横槍を入れることは僕達生徒総会にも出来ません」

「ああっ、それは知っている。あそこの通信機器やセキュリティは、特に気を張らねばならないところだ」」

「しかし、教師が一枚かんでいたとしたら……」

 各部門、各部署には一応監督役としての教師は存在する。

 生徒自治を謳う学園都市にとって、教師はあくまで監督役であり、介入は一切許されない。

「……誘拐の件だけがピンポイントに、あまりにもあからさま過ぎるのが疑問ですが、その線を考慮すべきかと」

「わかった。早急に理事会に掛け合おう」

 学園都市の学生に許されているのが、あくまで学生間の範囲でのこととなる。

 大人が介入したとなれば、理事会に掛け合った上での判断が必要となる。

 保安部も一応、教師の汚職の証拠を掴んだ場合の身柄確保の権限はあるが--今回それは使えない。

「どうやら、思った以上の大事件の様だ……ユウの奴、大丈夫かな」

「朝霧がつぶれるようなことがあれば、それこそ学園都市の治安は終わりだ」

「……それもそうだな」

 宇宙は白夜の一言に苦笑し、心配をやめた。

『大変です!』

 総会の会議室に、血相を変えた芹香が駆け込んできた。

「瀬川、まだ会議中だぞ!」

『申し訳ありません。ですが、朝霧さんが……』



 学園都市は騒然としていた。

「ひっ、ひぅぅっ……」

「大丈夫。大丈夫だから……しっかり捕まってろよ」

 街中で、首や手首にくっきりと縄の跡がある少女を、おんぶしながら……

 額から血を流し、意識が混濁してるかのような様子の裕樹が、姿を現し。

「……めんどくせえ。そのガキ返せ」

 王牙並みの巨体を揺るがしながら、学園都市武闘派最強と相対できる唯一の手配犯、荒川公人が追っていた。

 その様子は、既に臨時ニュースとして報道され、保安部も駆けつけてはいるものの……。

「危険です、下がって!」

 裕樹を負傷させるような相手にどうにか出来るわけもなく、周囲の非難しか出来ずにいた。

「朝霧さん!」

「大輔……悪いが、この子頼む。くれぐれも、保安部で預かるなよ」

「……お兄さん?」

「はい--こっちへ」

 その中に大輔を見つけた裕樹は、助け出した少女を大輔に渡し--

「さて……これで遠慮なくっ!!?」

「--めんど、くせえ……めんどくせえ、めんどくせえ、めんどくせえ……本気出すの、メガめんどくせえ」

 裕樹の胸倉が捕まれ、まるでボールでも持ち上げるかのように--

「ぐふっ!!?」

 裕樹を持ち上げ、背中から地面に叩きつけた。

 荒川公人、パワーにおいては鳴神王牙やバーサクモードの榊龍星をも凌駕する男。


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