学園都市のバレンタイン (2017年版)
「--報告は以上です」
「はい--では今日は、芹香が用意してくれたお茶とお菓子でお茶会と行きましょう」
「芹が?」
「本当は、2人きりにしてあげたかったんですが、少々外せない要件が出来てしまいまして」
「いや、そこまで気を使わせるわけには……時間が取れただけ良しとするさ」
「そういってもらえて何よりです」
そこで会話を切ると、別室で様子をうかがっていた芹香がノック。
そして--。
『お待たせしました。厨房を貸してもらって、作ってみました』
そういって運ばれてきたのは、チョコレートケーキ。
そしてホットチョコレートと、チョコレート尽くし。
「しかし、俺まで一緒でよかったのかな?」
『一条総書記には気を使って頂いた以上、邪険に出来るわけありませんよ』
「そうそう。俺も一条なら文句はない。まあ……」
龍星がちらりと見た先--生徒会の女子や、宇宙を支持する女子生徒たちからのチョコレートがどっさりとあった。
それも義理っぽい物など1つもなく、全てが手作りであると断言できるものばかり。
「……余計なお世話だったかな?」
「いえ、俺を慕ってくれてる人たちの好意は無下に出来ません……太らないかが心配ですけど」
『あっ、あははっ……」
--所変わって屋台通り。
「はい、つぐみ姉ちゃんにみなも姉ちゃん、友チョコ」
「ありがとう、裕香ちゃん。じゃあお返しに、はい」
「私も、どうぞ」
屋台通りでは、女の子同士の友チョコや義理チョコ配りが盛んにおこなわれていた。
中には……
「へえっ、これを機に付き合うことにしたのか」
「ああっ、感謝してるよ久遠」
「久遠君のおかげだから、ありがとう」
「良いって事よ。まあこれからは合同屋台で仲良くしていきな」
これを機に付き合う事にし、合同屋台を開くという展開もあった。
「屋台通りはやっぱり、和気と活気が藹々だね」
「大輔君、仕事」
「わかってるよ。光」
「わかってるように見えないよ、その手提げ袋」
「……そう言われても、義理と言えど無下にできないだろこういうのは」
見回りに来てる保安部、大輔と光
大輔の手には、感謝の意と言う事で結構な量のチョコがあった。
「--恋愛成就もあれば、チョコの量でボタモチ焼く女の子もあり、か」
「……ユウ、それボタモチじゃなくてヤキモチだから」
かくいう、女絡みではてんでバカなことと、学園都市最強の1人として名高い朝霧裕樹も--
今朝から送られてきたチョコレートの処理に悪戦苦闘していた。
たまたま屋台通りに遊びに来ていたひばりと、裕樹に同伴してた宇佐美も流石に苦笑いだった
「--裕樹さんって、意外とモテるんだね」
「モテるって言っても、殆ど仕事絡みの顔見知りからだけどね」
「それでもこれだけの量って……」
「それだけの仕事はこなしてるよ。まあ俺は仕事に感情差し挟まないから、仲がいいなんて実感ないけど」
そういった裕樹に、宇佐美が裕樹の眼前に突き出すようにチョコを差し出した。
それに続く様に、ひばりとみなももチョコを差し出す
「……仕事でそうなのは、今の雇い主のあたしがよく知ってるし感謝はしてるけど、そういう事言うなら今感じてね」
「こういう場なら、感情差し挟んだっていいと思いマシュよ」
「うん。実感なら今あげますから」
3人に突き出すように差し出されたチョコを受け取りーー
「ユウ兄ちゃん」
「ん?」
「はい、ユウ兄ちゃんの分」
「--ああっ、ありがとう……悪い、俺がただ見落としてただけだった」
--一方
「……ふぅっ--ん?」
静かで薄暗い室内--そこで、もくもくと何かの研究を行っている男
東城太助は、伸びをして再び取り掛かろうとしたところで、ふとおかれているチョコレートケーキを見つけた
メモがあり、拾って読んでみる。
『ハッピーバレンタイン 息抜きに食べてください 白河ユキナ 白崎カスミ』
「……うまい--なんか元気でたな」
ハッピーバレンタイン




